僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

無機質な感情すら失くして

激昂している上長を前に、

僕は先日に引き続き愛について考えていた。

そう。僕が得る事の出来なかった愛。

愛とは何も恋愛感情や家族愛に限った話ではない。

友達に対して抱く友情の念も愛の一種だし、

近所の住人や同じ職場の同僚らと挨拶を交わしたり

簡単な会話をするのも、

愛の一種と呼べるだろうと

僕は考えている。

先日も書いたが、僕はその愛情を得る事が出来ない。

それはどうしてだろうか。

ところで、何故上長が激昂しているかというと、

僕が30分かけて入力・作成したExcelのデータが

PCの不調によりフリーズして消えたからだ。

そしてこうして怒鳴られ始めてから

おおよそ一時間程の時が経過している。

すぐに再度やり直せていれば

とっくに完成していただろう。

全くもって不毛な事をするものだ。

やれやれ。僕は心の中で独りごちた。

僕の心中を察してか、上長の激が飛ぶ。

「お前、いい加減にしろよ!

 お前は自分が居るだけで、どれだけ

 周りに迷惑掛けてるか、

 少しでも考えた事があるのか。

 周りに申し訳ないと思った事はないのか!」

「はあ」

『おいてめぇ、いい加減にしろよ!』

『ちょっとその態度はあり得ないんじゃないんですか?』

『そうだそうだ、黙っていれば調子づきやがって』

突如、上長の周辺の職員らも加担し始めた。

精々好きなだけ日頃の鬱憤をぶつけるがいい。

自分よりはるか下のカーストに位置する人間に。

そう心の中で毒付いた。

怒声に混じり、遠くで同じアルバイトの身分の女子達が

小声で、だがしかし敢えて聞こえる程度の声量で

囁きあっているのが聞こえる。

『困るよね、ああ言うの』

『確かにあの人が全部悪い訳じゃないけど、

 どうせ結局いつもこうなるの解ってるんだから

 何とかするクセとかつけられないのかなあ』

『本当あの人が居ると空気悪くなって最悪だよね』

ああ、あの人、と呼ばれているのは

紛れもなく自分の事だ。

絶え間なく浴びせられる怒声の中で

僕はぼんやり思った。

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上長は両の平手で何度も自分の机を叩いては、

自らの怒り具合を力いっぱい表現している。

実に表現力豊かだ。

そして机を叩く度に机上に積み上がった書類の山が

少しずつずれて行く。倒壊は間もないだろう。

上長はチンパンジーみたいな動きを一旦止めると、

その瞬間思いついた様子でこう言い放った。

「解った。こうしよう。

 駒君、勤務時間少なくしよう。

 君の仕事に見合った時間数に減らさせてもらう」

最悪だ。

ただでさえ事足りていない給料がより少なくなる。

これ程まで今の僕に最悪な事態はない。

どんな罵詈雑言や嫌がらせよりも、

僕には最も堪える出来事である。

これには流石の僕も泣きついた。

「お願いします、どうかそれだけは

 勘弁してください。

 自分が悪かったです。本当に反省しています」

「悪かったと思うなら仕方ないだろう。

 その禊として受け入れろ」

「生活に困るんです。ですから――」

「そりゃ、困ってくれなきゃ禊にならないからな」

「でも、そんな」

僕の言葉を遮る合図のように、

一枚の紙が上長の机上の書類の山頂から

ひらりと舞う。

それと同時に書類の山は乾いた音を立て

総て床へと崩れ落ちた。

「とりあえず次の出勤日から16時上がりにしてもらうから。

 床の書類、片付けといて」

上長は一頻り怒鳴りつけて気が晴れたのか、

僕の哀願もお構い無しに

煙草を吸いに出てしまった。

また、上長に加担していた職員らも

全員が苛立ち交じりに各々の業務へ戻りつつある。

床に散乱した上長の書類を眺めながら、

僕はこれ以上削る余地のない生活費の

どの部分を削減するか、計算し始めていた。

書類を拾うため、床に這い蹲る。

意図的に自ら無機質な存在となり、感情を亡くすこと。

それだけが、この現状をやり過ごす唯一の路だった。

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