僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

誰も僕の終わりを知らずに

結局、日曜も前日に引き続き

二日酔いが抜け切らなかった事と、

それなのに残っていた数本のビールを

空けてしまったせいで、

一日中呑んでは寝てを

繰り返してしまった。

そして月曜日。

カレンダー上では平日だが、

今日はシフトが休みで、僕は連休だった。

正午頃起き出してネットをしたり

ゴロゴロしたりしていたが、

流石に何かしなければという焦燥感に駆られ、

平日なので診療している

整骨院に行く事にした。

診察カードを受付に出したのが

診療受付終了の19時半の5分前。

受付の女性が露骨に嫌そうな顔をした。

何時に来ようと僕の勝手だが、

今日は休みで時間があったのだから、

わざわざギリギリに来る必要もあるまい、

という彼女の心境も理解出来た。

連休の中日だし空いているだろうと思っていたが

かなり混んでいる。

一時間半ぐらい待ち、診察室に案内される頃には

既に時刻は21時を回っていた。

僕が最後の患者だったようで、

普段は忙しい院長先生が直々にじっくり施術してくれた。

院長先生とはいえ、元は近所のお兄さんだ。

幼少期から遊んでもらったり、

本当に良く面倒を見てもらっていた。

つい童心に帰り話が弾み、施術を受けながら沢山話をした。

先生と居る時だけは明るくて素直な自分になれる。

それでも主となる話題は暗かった。

バイトの勤務時間を減らされたこと。

連休初日から二日酔いで吐き続けたこと。

二日酔いが抜けた昨日も

ビール以外は何も口にしなかったこと。

そして今日は起きてからまだ何も食べていないこと。

院長先生は僕の私生活の荒みっぷりに

渋い顔をして、

苦笑しながら言った。

「こまくん、そんなんじゃダメだよ。

 そんな生活してたら、死んじゃうよ」

「ははっ。

 ……それも悪くないかな、って」

「何言ってんの。

 皆悲しむよ」

「誰も悲しまないですよ。

 僕が今死んでも」

僕は急に、すごく悲しくなった。

「皆僕が嫌いなんです。

 皆僕が居なくなればいいと思ってるんです。

 皆が、僕をいじめるんです」

皆、皆と、それが誰を指すのかも自分でも良く解らないまま、

僕は思わず泣き出してしまった。

院長先生と話していて童心に戻ってしまったせいだろうか。

子供みたいにわんわんと泣いてしまって止められない。

「皆、皆、酷いんです。

 だって、僕、僕、なんにも――」

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嗚咽に言葉が詰まる。

突然の感情の吐露にも関わらず、

院長先生は優しかった。

「ほら、ちゃんと食べないから。

 きちんとご飯食べれば、元気出るよ」

「でも、皆、酷くて、いじめて」

「俺はこまくんにいじわるしないでしょ。

 ねっ、ほら」

院長先生は施術のためうつ伏せに寝ていた僕を起こすと、

僕を施術用のベッドに座らせ隣に腰掛け、

僕の肩を片手で抱いた。

空いている反対の手で、寝癖がついたままの僕の頭を

優しく何度も撫でながら院長先生は話す。

「バイトでもなんでも、

 仕事なんかいくらでもあるんだから。

 たまたま今のところが合わないだけで、

 こまくんは駄目なんかじゃないよ。

 こまくんがきちんとしたいい子だって、

 ちっちゃい頃から知ってる俺が言うんだから。

 間違いないよ」

「でも、もう、僕、駄目なんです。僕、もう」

「人生、まだまだこれからなんだから」

院長先生は優しい。だからそう言ってくれる。

でも現実は違う。

僕はもう駄目だ。

僕はもう終わっている。僕の人生は終わっている。

このままいつか完全に食いはぐれて死ぬか、

世界との摩擦に疲弊しきったその時に自殺して死ぬかの

2つだけが、僕の確定された未来だ。

それも、近い内に必ず訪れるであろう未来。

給料が減る。それなのに、来月の返済額は増えた。

実は今、僕には30万の借金がある。

特別大きい買い物やギャンブルに費やした訳ではない。

生活費に。通院費に。やり切れない日の酒代に。

全ては細々と、だが着実に重ね来てしまった借金だ。

僕の肩を抱いた院長先生の大きく逞しい手の甲に、

僕の頬を伝う涙の雫がぽたりと落ちる。

誰も知らぬ間に、密やかに僕の終わりは忍び寄っていた。

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