僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

薄ぼけた悪意

勤務時間を短くされてから早一週間。

僕はそれまで18時までの勤務だったところを、

無理矢理16時までの勤務にさせられた。

毎日渋々16時で帰っていく僕に対し、

労いの言葉や挨拶の言葉をかけてくる者はいない。

だが、誰もが視線をぶつけてくる。僕の背に。

薄ぼけた悪意に満ちた視線を。

悪意にはすべて共通点がある。

目に見えないということだ。

目に見えなければ、認識が為されない。

認識がされない事象には

誰も干渉出来ない。だからたちが悪い。

しかも、悪意は増幅する。

干渉を受けないのをいい事に付け上がるのだ。

帰路につく電車の中でそう考えていた。

最寄駅で下車した。

せっかく帰宅時間が早まったのだから、

これからは休日ではなく勤務後に

整骨院に通おうと思う。

整骨院に立ち寄り、受付の女性に診察カードを渡すと、

無言で受け取られた。

ここでも無視されるのか。

流石にどこか自分に著しい欠点があるのではないかと

感じ始めていた。

僕は臭いのだろうか。汚いのだろうか。

それともどこか無神経なのだろうか。

時間が早かったので空いており、

待合室の席に座った途端に診察室へ呼ばれた。

今日も院長先生が担当してくれた。

僕はこの間泣き喚いた件もあり、

ちょっと気詰まりだったが、

院長先生は全く気にしていない様子で、

僕に普段の調子で色々話し掛けてくれた。

そんな中、ふいに何となく、僕は昨日感じて

散々調べた話をしてみることにした。

「先生。

 ……僕、自殺したらいいんじゃないかな、って、

 最近思うんです」

うつ伏せの僕を院長先生が施術をしているので

その表情は見られない。

しかし、一変した気配は察し取れた。

「どうして」

僕は先生の声のトーンが思い切り下がったのを聞き、

しまった、言わなければ良かった、と後悔した。

何故自分はこんな話をしてしまったのだろう。

別に誰にも話す必要なんてなかったのに。

「こまくん」

先生は低い声のままそう言うと、

僕の背に体重を載せて覆い被さった。

思わずくぐもった声が漏れた。

「そんなの許さないから」

そう呟いて、先生僕の背から降りて

施術を再開した。

それから暫く先生は無言だった。

しかし、意を決したように深く息を吸って

話し始めた。

「あのね、こんなに可愛がってる子が死にたがってるなんて、

 悲しまないわけないでしょうが。

 俺に出来るならそいつら皆しばいてやりたいけど、

 現実には無理なんだもん。

 俺だって辛いよ。何もしてあげられなくてさ。

 でも、こまくんは、一人じゃないから。

 少なくとも俺がいるから。

 それだけは忘れないで」

こんな風に、優しく温かい言葉を掛けてくれる人もいる。

それでも。

いつまで戦い続けられるだろうか。

また明日も投げ付けられるであろう、

薄ぼけた悪意たちと。

漠然とした不安とリュックを背負って靴を履き、整骨院を後にした。

帰り際に挨拶をしたが、受付の女性は何も言わなかった。

にほんブログ村 セクマイ・嗜好ブログ 同性愛・ゲイ(ノンアダルト)へ