僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

緩やかな絶望

僕の勤務している職場には食事を食べる場所が

自席しかないので、

嫌われ者の僕は必然的に

外で食事を摂ることになる。

それに、自席で昼食など食べようものなら、

どんな目に遭わせられるか解ったものではない。

また、外に出ることで心の平穏を

取り戻せるのだ。

いつも通っている定食屋へ向かった僕だったが、

定食屋の扉に『本日急用のためお休みを頂きます』

との張り紙があった。

仕方なく、僕はコンビニで適当に弁当を買い、

近くの大型集合オフィスビルのロビーへ向かった。

誰もが入れるエントランスフロアに、

お弁当などを食べたりする事が出来るよう

机と椅子が設置されているのを思い出したのだ。

(ネット乞食始めました)

弁当の入ったコンビニ袋を手に、

近くにある大型オフィスビル

オープンスペースに訪れた。

一階のフロアだけは関係者以外の誰でも立ち入れるエリアになっており、

飲食店などのテナントも入っている。

その飲食店などで購入した物を食べたりする事が出来るよう、

オープンスペースには机と椅子が並べられている。

どれも四人掛けのテーブルで、沢山ある。

だがしかし、どれ一つとして空きは無かった。

弁当を広げて談笑するOL。

馬鹿でかい声でだべっている子連れの母親のグループ。

パソコンで作業をしているサラリーマン。

その隣のテーブルでは突っ伏して居眠りしている奴までいる。

オープンスペースのテーブルでは

何をしても自由だが、迷惑行為と飲酒、

そして居眠りだけは禁止されている。それなのに。

仕方なくどこかのテーブルが空くのを待つ。

5分。

立ち尽くす僕に誰も目をくれなかった。

10分。

誰もが僕の存在に気付いているようだった。

だが、誰一人として席を空けようとはしない。

15分。

もう昼休みの時間が残り僅かになってしまった。

このままでは昼食を食べ損ねてしまう。

僕は待つのを諦めて、とにかくどこか食べられる場所がないかと探した。

間もなく昼休みが終わってしまうので必死だ。

他にテーブルが設置されている場所はどこにも無かった。

何箇所かベンチが設置されている場所はあったが、

どこも満席だった。

どうしよう。どうしよう。

焦りと急いで移動しているせいで

背と脇がどんどん汗ばんで行く。

ふと、ある看板が目に飛び込んできた。

自動販売機コーナー。

その看板の端に、小さく受話器のマークが書かれているのを視認したのだ。

僕は奥まった場所にある自動販売機コーナーの中へ慌てて駆け込んだ。

僕の想像は当たっていた。

自販機の並びの薄暗い奥の方に、公衆電話が

ぽつんとカウンターの様な台の上に置かれてあった。

公衆電話が置かれている台はとても広々としている。

昔はもう一台ぐらいあったのだろうか。

しかしこれだけのスペースがあれば

弁当を広げられる。

今や総スマホというこの時代に

わざわざ公衆電話を利用しに来る人など絶対に居ない。

立ち食いにはなるが、

トイレで食べるよりはるかにマシだろう。

僕はそう思い、公衆電話の台に弁当を広げて

慌てて食べ始めた。

残り時間は本当に僅かだった。

急がなくては。飲み込むように食べる。

途中何度もつっかえそうになってむせた。

お茶で流し込み、只管猫背になって無心で貪る。

ふいに気配を感じて振り向いた。

そこに立っていたのは、一目で清掃員と解る服装の

50代ぐらいの女性。

振り向いた僕と目が合った瞬間、彼女はひっ、と

小さく悲鳴を上げた。

確かにここは公衆電話を使う場所であり、

弁当を食べていい場所ではない。

僕は小さく、すみません、と言った。

彼女は慄いた表情のまま後ずさりをして

どこかへ行ってしまった。

彼女は僕に恐怖を覚えたのだろうか。

そうだとしたら、一体、僕のどこに。

僕はそんなに異質な存在になってしまっているのだろうか。

でも、僕はそんなのへっちゃらだった。

異物扱いされるのは慣れている。

学校で。家庭で。バイト先で。ゲイバーで。

いつも、誰もが僕を異質の存在として取り扱うのだ。

こんな事気にしている暇はない。

先程の清掃員の女性の瞳に浮かんでいた

あからさまな恐怖の色についてなんて

考えていられる程、時間は残っていない。

弁当の残りを、食べると言うより飲むように

かっ込みお茶を飲み干した。

割り箸や空になった容器等のゴミをコンビニ袋に

詰め込んで、慌てて走り出す。

食べる前には、食べる為に必ず必要な箸、

そして食べ物を収納しておく為の大事な容器が、

食べ終えてしまえば総てゴミになってしまうと言う無常に、

幾許かの儚さを覚えた。

だが、僕よりはマシだろう。

いずれゴミになってしまう物達であったとしても。

最初から誰からも必要とされていない僕よりかは。

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