僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

愛が遠のく理由

「おはようございます!」

いつもとは明らかに異なった僕の快活な声に、

オフィスに居た全員が一斉に僕の方を見た。

中には思わず『お、おはようございます……』なんて

返してしまっている奴まで居た。

そう。今日の僕は完全に浮かれている。

服もいつもより良いやつを着ているし、

髪型もバッチリに決めている。

誰もが僕の浮ついた陽のオーラに戸惑っていた。

他のバイトの女性達が何があったのだろうかと

囁きあっているのが聞こえた。

当然、職場の誰にも理由なんて明かさない。

だがここで明かそう。

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昨日のLINEは賢一からだった。

内容はこうだ。

『この間はごめんね。

 ところで、明日の夜って空いてるかな?

 そろそろ会おっか。明日の夜は大丈夫そうなんだよね』

つい数刻前まで涙に暮れていたのが嘘のように、

僕は飛び上がり返信を送った。

『明日の夜大丈夫だよ!

 何時にどこにする?』

『19時に新宿駅の東南口でどう?』

『わかった! 待ってるね』

『うん。頼むね。俺も楽しみ!』

賢一と会える。やっと会えるのだ。

今日は一日バイトなんて殆ど手が付かなかった。

浮かれすぎだ。

でも誰も何も言って来なかった。

ただ一言、上長に『駒君、何があったの?』と

驚いた様子で聞かれただけだった。

長いような、あっという間だったような勤務時間が終わり、

退勤の16時になった。

慌てて帰りの支度をして、オフィスを出た。

「お先に失礼します!

 どうも、お疲れ様でした!」

思わず満面の笑みで高らかと言い放ってしまった。

普段の僕からは全く想像のつかない振る舞いだ。

しかし、それに気が付いたのは

ビルを出る為にエレベーターへ乗り込んだときだった。

待ち合わせ場所の新宿へ着いたのは17時過ぎで、

約束までかなりの時間があった。

少しのんびりしようと、普段は高くて入らない

スタバに入り、コーヒーを飲みながら待つ事にした。

レジのお姉さんがとても感じ良く接客してくれたので、

こちらもめいいっぱい愛想良く応対したら

軽い雑談になったのだが、お姉さんに

『これからデートですか?』と鋭い質問をされ、

思わず顔が赤くなった。

『内緒です』とだけ答えておいた。

だが答えは顔一面に表れていたことだろう。

早く時間にならないものか、と焦れながらも浮かれつつ

味わうコーヒーは格別だった。

コーヒーのお代わりまでした。

スタバは普通のコーヒーならレシート持参で

お代わりが100円になるということで、

なんだか得したような気分になって

何もかも運が僕に向いてきたような気になって

とても嬉しくなった。

お代わりのコーヒーも飲み干した頃、

待ち合わせ時間の丁度10分前になった。

トイレへ行って髪型などを入念に確認し、

JR新宿駅の東南口へ向かった。

東南口は週末の夜という事もあって

かなり混み合っていた。

賢一は僕を見つけられるだろうか。

約束の時間になった。

賢一の姿を探す。

実際に会うのは今日が初めてだから

顔は解らないかも知れないが、

長身なのだからすぐに見つかるだろうと思った。

だが、見つからない。

空いていた壁に寄りかかって

iphoneを見ながら待つ事にした。

待つ事30分。

中々現れず、こちらから送ったLINEにも

反応しなかった賢一から

ようやくLINEで返信が来た。

『待たせてごめん!

 悪いんだけど、あと1時間ぐらいかかりそう……。

 待ってられる?』

『うん。全然大丈夫だよ。

 適当に時間潰してるね』

30分も待たせておいて、更に1時間も待たせる神経に

多少の苛立ちを覚えつつも、

気長に待とうと思った。

東南口そばのショッピングビルを軽く冷かして、

中に設置されていたベンチに腰掛けて

待つ事1時間。

賢一から再びLINEが来た。

『本当にごめん。

 あともう1時間ぐらいかかりそう。

 どうする?』

流石にかちんと来るものがあったが、

自分を抑えて返信した。

『ううん、本当に大丈夫だよ。

 まだお店もやってるし、適当に待ってるよ』

この時点で既に20時半を回っていた。

腹も空いてきたが、待つ。

賢一と会える。

その為に今日という一日を過ごしたのだから。

待つ事更に1時間。

時刻は21時半を回っていた。

僕はタワレコや服屋を冷やかすのにも疲れ果て、

だらしなく足を放り出してベンチに座り込んでいた。

賢一からLINEが来た。

『ごめん。

 今日はやっぱり無理そう。

 本当に申し訳ない』

何となくそんな予感がしていた。

もう諦めもついていた。

『ううん。全然大丈夫だから気にしないで。

 それじゃあ帰るね』

それ以降、賢一からの返信は無かった。

ビルを出て、深く嘆息する。

自分が酷く惨めに思えた。

僕はまた愛ある世界から遠のいた気がした。

理由も解らないまま。

帰って寝よう。

何も食べず。何も飲まず。

そう思い、改札へ入ろうとしたその時だった。

「駒ちゃん!」

聞き覚えのある声。見覚えのある整った顔立ち。

でもどこか人として軽い感じのする、この感じ。

スーツ姿の亘が、改札の中に居た。

亘は僕を視認するとでかい声で僕に呼びかけ、

改札から出て来た。

「駒ちゃん!

 何してんの?」

「何してんのって、見りゃ解るじゃないですか。

 これから帰るところですよ」

僕はぶっきらぼうに言い放った。

賢一に散々待たされた挙句すっぽかされて

物凄く不機嫌だった。

「いや、そりゃそうだけど。

 まだ夜はこれからじゃん?

 週末なんだし」

「それじゃ、また」

帰ろうとする僕を制止して、亘は続けた。

「いやいやいや、駒ちゃん、待て待て!

 なんかあったの?

 お兄さんで良けりゃ話聞くよ」

「亘さんはそろそろお兄さんってより

 おじさんって歳なんじゃないですか」

僕は亘に思い切り八つ当たりした。

人が真剣に落ち込んでいる所に、ヘラヘラと割り行ってくる

亘のデリカシーの無さが頭にきた。

しかし、亘は僕の嫌味を気にも留めず、笑い飛ばした。

「そんな事言わないでよ~。

 まだまだ俺だって若いんだぜ?

 まっ、おじさんでもお兄さんでも

 なんでもいいけど、帰んないでよ」

「どうしてですか。

 お腹空いてるんで、もう帰りたいんです」

「ようし! じゃ、おじさんがメシ奢ってやる」

「結構です。

 終電も早いから、そんなに長居出来ないし」

「まあまあ、そう言わずさ。俺に付き合ってよ。

 週末だし。明日休みでしょ?

 俺も腹空いてんのよ」

「こんな遅くに外食なんて、太りますよ」

「うっせーな、おめーは。何食べたい?」

「っていうか、僕は本当に――」

「はいはい。じゃあ俺が適当に決めちゃうよん」

僕は亘に強引に腕を引かれ、

無理矢理食事に付き合わされることになった。

「あっ、でも、その前に、

 一箇所だけ寄り道していい?」

亘は僕の瞳を覗きこんで尋ねる。

亘の黒目は照明を一杯に反射してきらきらと輝いていた。

僕は渋々頷いた。

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