僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

諦めた夜に

どうしてこんな事になったのだろうか。

僕は都庁の展望台へと直行する

エレベーターへ乗り込みながら

深く溜息をついた。

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亘に連れられるがままに

都庁の展望台へと来ていた。

本来ならば賢一と会っていて、

食事でもしていた頃だったろうに。

僕の空腹も、不機嫌さも一切意に介さず

亘は笑っていた。

「いやあ、一回来てみたかったんだよね!

 新宿って二丁目には良く来るけど、

 都庁とかがあるこっち側の方は

 普段全然来ないもんな~。

 すっげ、夜景きれいだなあ」

二丁目という言葉に、近くに居たカップルが反応して

怪訝な表情でこちらを見た。

僕が今日一日の怒りを込めて睨み返すと、

慄いてどこかへ行ってしまった。

雑魚が。

僕の不穏なオーラを、亘は全く気にしていない。

そして亘のでかい声は、

寄り添い夜景を眺めるカップル達の

ロマンチックなムードをぶち壊しにしていた。

「ほらほらほら、見て!

 あのビル。見えるかな。

 あそこで俺働いてるんだよ」

亘は遠くのビルを指差して言った。

遠過ぎて全く解らなかったが、

指し示している方角は僕のバイト先がある街と

同じ方向だった。

「近くで見るとでけービルなんだけどさ、

ここからだとちっとも見えやしねえんだな。

絶対見てやろうと思ったのに」

「はあ。どうして見たかったんですか」

僕はもう何もかも諦めて、

今夜は亘に付き合ってやる事にした。

「うーん。深い理由はないんだけど。

俺の会社の入ってるビルさ、そこの街の中では

一番でかいビルの一番上の方に入ってて、

ちょっとそれを自慢に思ってんの、俺。

で、こんだけでけぇんだから、

絶対都庁でも東京タワーでもサンシャインでも、

どこからでも見えるだろ! って思ってた。

でも見えないね。残念」

「自分の働いてるオフィスを遠くから見たら

どんな感じか見たかった、ってことですか」

「うん。そう」

心なしか亘は意気消沈しているようだ。

そんなに見たかったのだろうか。

「でも、別に遠くから見えなくても、

すごいビルの上の階で働いてるっていうだけでも立派だし、

誇りに思ったままで良いんじゃないんですか」

「かっこいいと思う?」

「それは、仕事の内容によります。

たとえオフィスが立派でも、

どんなにお金を稼いでいても、

しょうもない仕事をしている人は

ごまんと居ます」

「さっすが、駒ちゃん。クールだね」

「亘さんはかっこいいですよ」

僕は素直に心から思ったことを告げた。

見てくれや職業など、表面的な事柄だけで

人を選ばない亘の人柄は素直に尊敬しているし、

亘自身見た目も性格も素敵な人ではある。

いささかデリカシーに欠ける所はあるが。

「あ、ありがと」

亘は何故かしどろもどろして答えた。

でも最早その理由などどうでも良かった。

何故なら。

「あの、もうお腹空いて限界なんですけど」

盛大に僕の腹の虫が鳴った。

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