僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

望みの無い夜風 前編

僕と亘は都庁を後にし、

新宿駅西口周辺で食事をすることにした。

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僕は外食自体滅多にしないし、

西口方面にも殆ど来ないので、

この近辺の飲食店の知識は全くなかった。

その旨を伝えると、亘が店を選んでくれるという。

言われるがままに着いていくと、

ある小さな雑居ビルのエレベーターホールへ連れてこられた。

「ここね、前一回だけ来たんだけど、

 結構おいしかったんだよね。

 イタリアン苦手じゃないよね?」

エレベーターホールの壁に貼られたテナントの案内を見た。

そのイタリアンの店は一番上のフロアに入っているようだ。

申し訳程度に小さくメニューも張り出されている。

だがそれを見て驚いた。

かなり値が張った店だったからだ。

「亘さん。僕、確かに奢って貰うつもりで着いて来たんで、

 料理は亘さんの食べたい物で構いません。

 でも、そうは言っても、

 こんなに高いお店で

 ご馳走になる訳にはいかないですよ」

どの料理も、どの飲み物も、一品辺りの価格が

僕の時給にして2時間分ぐらいの品ばかりの店だったのだ。

亘の好意に甘えるとは言え、

流石にこんなに高い店で全額出して貰う訳にはいくまい。

かといって、自分に一部でも払える程の経済的余裕は無かった。

亘は口を尖らせて、子供が駄々をこねるように抗議した。

「え~、だって、今夜は俺に付き合ってくれるって言ってたじゃん。

 本当にお金の事は気にしなくていいから」

「この店で、二人で満足するだけ一晩飲み食いした金額と、

 僕の一ヶ月分のお給料、一緒ぐらいだと思います。

 そう思っちゃったら、何も喉通らないです」

「今夜は全部俺が出すから。俺の好きにさせてよ」

「そんな訳には――。

 それに、僕、亘さんの何でもないじゃないですか」

「友達じゃん!」

「そう思って貰えてたなら光栄です。

 けど、それなら尚更です。

 友達に高い店でのご飯なんて奢らせられない」

「もうっ、駒ちゃんのわがまま!」

僕と亘は狭いエレベーターホールで軽い口論になった。

しかし、埒が明かない。

僕は思いついて提案をしてみた。

「亘さん、イタリアンだったらいいんですか」

「まあ、イタリアンなら何でもいいけどさ、

 他のイタリアンの店にするってこと?

 どっか知ってるの?」

僕は頷き、無言で亘を促す。

亘を後ろに引き連れ西口のヨドバシカメラ付近まで歩いた。

そして地下へと通じる階段を降りた先にある店に入った。

入り口の扉に書かれてある店名は、

サイゼリヤ

店員に案内してもらって席につくなり、

亘は急に嬉しそうに満面の笑みで

にこにこし出した。

「駒ちゃんさ」

「はい」

「よくかわいいって言われない?」

「言われません」

僕は適当に相槌を打ちながらメニューを眺めた。

亘はメニューも開かず、にこにこしながら僕を見つめている。

僕はメニューが一冊しか置いて無かったのかと思い、

一人で独占して読んでいたメニューを

机の上に横にして開き、

亘にも見えるようにしてやった。

「ねえ」

「どれにしますか。

 僕もうお腹空いちゃって」

「かわいいね」

「はあ」

「本気よ、俺」

「そりゃ光栄です。

 じゃ早く決めてください」

「駒ちゃんの好きなものでいいよ」

「亘さんの好きなものにしてくださいよ」

「駒ちゃんの好きなものが

 俺の好きなものだよ」

相手にしては埒が明かないと再び感じ始めたので、

テーブルに備え付けられたブザーのボタンを押して店員を呼び、

とりあえずサラダとピザとデカンタのワインを注文した。

「俺ね、ずっと駒ちゃんとこうして

 タイマンで話してみたいなって

 思ってたんだよね」

「タイマンって。

 ヤンキーの喧嘩じゃないんですから」

「そうだね、サシって言った方がいいね」

気が付くと二人とも自然に笑っていた。

(続きます)

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