僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

望みの無い夜風 後編

僕達は歌舞伎町にあるドンキホーテまで移動していた。

亘はパックのビールと、大瓶で高いシャンパンと、適当なつまみと、

寒がる僕のためにと暖かいブランケットまで買ってくれた。

そして店を出るとまた亘の後ろについて歩く。

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「外飲みって言ったって、どこまで行くんですか」

「ん、新宿中央公園

「……都庁のふもとじゃないですか。

 スタート地点まで戻るんですか」

これだけ金を出してくれているのだから

あまり文句も言えないが、

こう新宿中を歩かされるのは流石にしんどかった。

都庁の辺りまで戻ってきた。

そして都庁を通り越し、新宿中央公園を目指す。

この時間になるとこの辺りに人影は全く無かった。

車さえ滅多に通らないので恐ろしく静かだ。

僕と亘、二人だけの世界に迷い込んだかのような

錯覚さえ覚えるほどに。

新宿中央公園の正面の入り口に辿り着いた。

大きい滝の様な噴水の水は、夜だからなのか

完全に止まっている。

亘は大きい階段の辺りに座って飲もうと言ったが、

公園の入り口付近に無人ではあるが

交番があったのを僕は配慮し、

もうちょっと奥まったところにしようと提案した。

噴水脇の大きな階段を上ると、

付近のビルを下から見上げられるように

丁度良く視界が大きく開けた場所にベンチがあったので、

そこで飲むことにした。

亘は大瓶のシャンパンを開け、僕に差し出した。

「はい、これ。

 普通の店で飲むとウン万円するやつ。

 ドンキってすごいね。こんなのがこの値段なんだから」

一円も出していない自分が最初の一口を飲んでいいものか

迷ったが、亘に勧められるがまま瓶に口をつけた。

甘口で上品なシャンパンだ。

口当たりの軽さに対して

意外と度数は高そうだと感じた。

そして、瓶から直接口を付けて飲むような類の

酒ではないということも。

適当なところで亘に瓶を返す。

亘は笑顔でぐびぐび飲んだ。

「ぷは、うまいな~。

 へへっ、駒ちゃんと間接キス」

「なんか、本当、ありがとうございます。

 何から何までお金出してもらっちゃって」

僕は亘が買ってくれたブランケットを早速羽織りながら

礼を言った。

「何言ってんの。若いんだから気にしないの」

「でも、自分もう若いって言ったって2×歳ですよ」

「なーに、そんなの。まだまだだよ」

亘は再び瓶を渡して来た。

まだまだ結構な量が残っている。

しばらく二人でシャンパンを回し飲みしながら

色々な話をした。

「そういえば、駒ちゃん。

 今日はやけにオシャレじゃん」

「ああ、これは――」

つい言いかけて、言うのを辞めた。

恥ずかしさを覚えたのだ。

賢一に初めて会える筈だったからだなんて。

そしてそれにも関わらず約束をすっぽかされたなんて。

しかし亘は鋭く喰い付いてきた。

「オトコと会ったからだな、駒ちゃんめ」

「……」

「どんな奴だったんだ。おにーさんに教えろ」

僕は無言を貫いた。

だが、しかし。

「はっはーん、解ったぞ。ぜーんぶ解った。

 来なかったんだろ。そいつ。

 だから会った時帰ろうとしてたんだ。

 イライラしてたのもそのせいだ」

「……そうです」

亘は変に勘が良い。

僕は観念して、亘にありのまま伝えた。

「えっと……ネットで知り合った人で、

 ずっと会おうって言っても中々会ってくれなくて。

 で、ようやく会う約束が取れて、待ってたんですけど――」

「すっぽかされたんだ」

「はい……」

僕は酷く惨めで悲しい気持ちになって、

がっくりと項垂れてしまった。

そんな僕の肩に腕を回し、がっしりと掴んで揺さぶりながら亘は言った。

「駒ちゃん。ネットで知り合ったような奴なんてダメだって」

「でも」

「ましてや、会ってもないのに好きになんかなっちゃダメだからね」

「別に、好きな訳じゃ――」

「好きだから、会えなくて辛かったり、

 約束すっぽかされて腹が立ったりするんじゃねえの?」

僕はもう何も言い返せなかった。

亘の意見はどこまでも的を射たものだった。

僕自身よりも的確に亘は僕の心理を分析している。

僕自身よりも亘は僕を解っている。

ひたすらしゅんとする他なかった。

亘はそんな僕にシャンパンの瓶を持たせて、

僕の肩を抱き寄せた。

「駒ちゃんにこんな想いさせるなんて、

 許せねえ野郎だなあ。まったく。

 駒ちゃん。やっぱネットなんかダメだよ。

 ちゃあんと、お互いの事を良く解り合ってる同士じゃなくっちゃ。

 例えば……俺とか!」

「冗談きついですよ」

亘の高い体温に心地よさを覚えながら、

僕は相変わらずの減らず口を叩く。

「そんなあ。ひでえや」

「だって、僕、亘さんの事何にも知らないですよ。

 携帯の番号も、アドレスすら知らないぐらいですもん」

「うそ! 俺教えなかったっけ?」

亘は本当に信じられないという様子だった。だが知らないのは事実だ。

「じゃ、今教えるから登録して。あとLINEも教えて。

 絶対連絡するから!」

こうして亘と僕は初めてお互いの連絡先を交換しあった。

「寂いときは、いつでも電話してくれていいからね」

「はあ、そりゃどうも。

 その台詞今まで何人に言ってきたんですか」

「今初めて!」

「……呑みますか」

「おう、呑もうぜ。ガンガン呑もう」

再び秋の夜風が吹き抜けた。夜が深まってきた。

亘は身震いして言った。

「おー、やっぱりちょっとだけ冷えるなあ。

 なあ、俺にもそのブランケット、かけてよ」

僕は亘にくっつき、ブランケットの片端をかけてやった。

ブランケットを落とすまいと、自然と二人とも密着する形になる。

「えへへ、ねえねえ、俺たちこのまま付き合っちゃおうよ」

「何馬鹿なこと言ってるんですか。

 さっきも言ったじゃないですか、何にも知らないって」

亘は体温が高く、寄り添っていると本当に暖かかった。

「じゃ、これから知り合っていこうよ」

その瞬間、iPhoneの通知が鳴った。

こんな夜中に誰だろう。

不思議に思い見てみると、賢一からのLineが届いていた。

僕はそのメッセージを読むことなくiPhoneをポケットにしまい、

シャンパンの残りを飲んだ。

まだまだ酒が足りないと思った。

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