僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

確かに僕は会いたかったのかも知れない

15時頃、いつもの様に

ネットサーフィンをしていると

上長に呼び出された。

先程##社から電話があり、

これから僕に来社して欲しいのだという。

また亘から呼び出されたのだ。

業務的には楽だから構わないが、

一体亘は何の考えがあって

僕をこう呼び出すのだろう。

全くもって解りかねる。

しかし、ここに居てもどうせ

仕事も与えてもらえないので、

良い気分転換になるだろうと考え

僕は身支度を始めた。

自席のPCを落とし、上着を着て

リュックを背負う。

上長に確認したところ、

今日も##社から直帰してくれと言うので

タイムカードは押さずに

職場を後にし外へ出た。

寒い。

ほんのここ数週間で本当に寒くなった。

それにまだこんな時間なのに、既に空が

オレンジ色に染まりつつある。

もう今年も終わりかと思うと

無力感に襲われて虚しくなるが、

気を奮い立たせて##社の入っている

xxタワーへと向かった。

そう言えば、また今日も上長に

どうやって入館するのか訊くのを

忘れてしまった。

xxタワーへの道中で思い出したのだった。

まあなんとでもなるだろうと

適当に考えながら歩いた。

xxタワーの正面玄関に着くと、

どこかで見覚えのある女性が

誰かを探すように立っていた。

その女性は薄着であるのに凛としていて

寒さに等全く動じない気配で立っている。

よくあんな格好で外に出ていて寒くないな、

等とぼんやり思っていると、

その女性は僕を認識し、近付いて来た。

「駒様、お待ちしておりました」

丁寧でありながらも、

どこか冷たさを帯びた彼女の声を聞いて

僕の記憶が蘇った。

この人は以前、ここのフリースペースで

亘に遭遇した際に同席していた女性だ。

名前は確か――彼女は亘から園田と呼ばれていた。

「……園田さん、でしたっけ」

眼鏡の奥の彼女の瞳が一瞬鋭く光った気がした。

背筋が凍る様な眼差しだった。

「ご案内致します。

 どうぞ、こちらへ」

園田さんは僕に入館証を手渡し、

先立って僕をxxタワー内へ案内した。

入館証をゲートにかざして中に入り、

エレベーターに乗り込んで

最上階を目指す。

僕は非常に気まずさを感じていたが、

彼女は何に対しても動じる気配が無かった。

彼女を言葉で簡潔に表すとしたら、

完璧という二文字しか浮かばない程、

彼女はきちっとしていた。

しかしどこか冷たく鋭い雰囲気を醸し出していて、

僕は恐怖に似た感情を彼女に抱きつつあった。

##社のオフィスに着いた。

入り口近くに居た人に軽く挨拶をしてから、

園田さんに導かれるまま移動した。

「大変恐縮ですが、本日はこちらでお待ちください」

そう言って彼女が僕を通した部屋は、

応接室ではなく、恐らく

従業員の休憩室であろう部屋だった。

簡素なテーブルや椅子が多く並んでおり、

壁際にテレビが置かれてあり、

どの席からでもテレビが見られるようになっていた。

園田さんはその後僕にお茶を出すと、

亘が来るまで待っていて欲しい、

また、その間自由に過ごしていてくれて

構わないという旨の事を

僕に伝えて部屋を出て行った。

部屋には僕以外誰も居なかった。

僕は園田さんの言葉通り、

自由に過ごさせて貰う事にして、

テレビを付けた。

恥ずかしいので内緒にしていたのだが、

実は僕は家にテレビを持っていない。

理由は単純に買う余裕が無いからだ。

だから、テレビを見る機会が非常に少ない。

それ故にテレビは存分に僕の時間を潰してくれた。

実家でいつでもテレビを見られていた時は

テレビに退屈する事もあったが、

こう何年もテレビに触れていないと、

何もかもが新鮮で、あっという間に時間が過ぎていった。

##社に着いたのは確か15時半頃だったが、

気が付くと夕方のニュースも終わり、

ゴールデンタイムに入っていた。

長時間ここで夢中になってテレビを見て過ごしていたが、

誰も部屋に入って来なかった。

ふと、今日もこんな形で業務時間を過ごす事となり、

果たして本当の本当に給料が貰えるのかと

突然猛烈な不安に駆られたが、

19時半になり、クレヨンしんちゃんが始まると

その不安はどこかへ飛んで行ってしまった。

クレヨンしんちゃんが終わり、

ミュージックステーション、この後すぐ』

という旨のCMと同時に

部屋をノックする音がした。

思わず慌ててテレビを消した。

部屋へ入って来たのは園田さんだった。

「長時間お待たせして誠に申し訳ございません。

 大変恐縮なのですが……」

彼女は、亘は打ち合わせが長引いてしまい、

今日は僕に会えなくなってしまったので、

今日のところは僕には帰ってもらうようにとの

伝言を亘から預かったと話した。

「はい。承知しました。

 それでは、どうぞよろしくお伝えください」

「かしこまりました。

 お出口までご案内致します」

園田さんに案内され、僕はxxタワーを出て

帰路についた。

今日わざわざ呼び出しておいて、

亘は一度も僕に顔を見せなかった。

ただテレビを見て過ごしているだけで良かったのだから

仕事としては勿論文句ない。

しかし、何かが心の中で引っ掛かっていた。

その引っ掛かりを、寂しさと呼ぶのかどうか。

今の僕にはまだ判断がつかなかった。

(↓どうかクリックお願いします。)

にほんブログ村 セクマイ・嗜好ブログ 同性愛・ゲイ(ノンアダルト)へ このエントリーをはてなブックマークに追加