僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

青春の輝き 前編

丁度この記事で累計記事数が100に達する。

記念と言うわけでもないが、

書くネタも尽きつつあるので

僕の初恋について書いてみようと思う。

高校生の頃、英語の伊藤先生が好きだった。

伊藤先生は当時30代前半の未婚の男性で、

体躯が良く体育の先生に間違われる事も多い人だった。

立端もあり、がっしりとした体付きに強面でもある事から

生徒達からは恐い第一印象を抱かれがちだったが、

親切丁寧で優しい心の持ち主だった。

正直勉強は苦手な方だったし、

あまり熱心な姿勢で学業に取り組んでいなかったが、

伊藤先生が担当の英語だけは真剣に一生懸命取り組んだ。

予習復習は勿論の事、自分で教材を購入して自主的な学習にも励んだ。

当時の僕は、放課後遅くまで残って伊藤先生に

その日の授業を深く質問したり、

自主学習に良い教材について相談に乗ってもらったりと、

なんやかんやと理由をつけては伊藤先生と会話する口実を作った。

邪な動機とは言え、伊藤先生はいつ何時たりとも嫌な顔一つせず、

真摯に僕と向き合ってくれた。

そのお陰もあって、実は僕は今でも英語は普通の人より喋れる方である。

最初の内は、実の父親と思春期に離別した僕の複雑な心が、

伊藤先生の男らしい外見と優しさに父性を見出して

惹かれたのだろうと思っていた。

しかし、こうした日々を重ねていくにつれて

徐々に勉強以外の話も深くするようになり、

身の上話等を聞いてもらっていく内に、

僕のこの気持ちは恋であると悟った。

僕はこの上なく伊藤先生を好きになった。

歳月と共に家庭内での問題事が大きくなっていくにつれて、

僕は英語以外の教科に対する姿勢がいい加減になっていった。

家に帰れば継父との諍いが絶えなくなったため、

家に中々帰らず外で時間を潰してから夜遅く帰宅するようになり、

結果として日中は眠気に耐えられず

授業をさぼって保健室で寝るようになっていった。

それでも英語の授業だけは真剣に受け、

四六時中勉強していたので、英語だけは良かったが、

それ以外の教科の成績は下がる一方だった。

担任の女教師に成績の低下を詰られた。

もう名前も忘れたのでここでは女教師としか呼称しない。

当時20代だかの、まだ大学を出たての女だ。

僕にとってはただそれだけの存在だ。他に特筆する記憶も無い。

「ねえ、なんなの? この成績。全然駄目じゃない。

 進学どころか、進級も危ういわよ。

 英語だけは悪くないけど、英語だけでやってけるほど甘くないのよ。

 そう言えばあんたっていつも学校には遅くまで居るのに、

 伊藤先生以外の所に居るの見たことないけど、

 あんた、英語の伊藤先生と個人的な『何か』あるんじゃないの?

 有り得ない話じゃないわよね。

 あんた、なんかなよなよしてて、男っぽくなくて、オカマみたいだもの。

 っていうか、オカマでしょ? あんた。

 嫌だわあ、穢らわしい。気持ち悪いわね。

 あたし、同性愛者って大嫌い。

 同性愛者って、生きてたって何一つ世の中の為になる様な事なんかしないじゃない。

 なんてったって、おかしいでしょう。不自然だわ。

 だって、子供が作れないのよ?

 子供を産み育てて次世代に血を繋いで行かないって、

 生まれて来た価値が無いのと同然でしょう。

 人間って言うのは、自分の遺伝子を次世代に遺していく義務があるのよ。

 それは神から授かった、そして親から受け継いだ使命みたいなものよ。

 あたしはその使命を果たせない人間は異常者だと思うし、生きてちゃいけないと思う。

 更にその使命に背くなんていうのは重大な罪だわ。

 その使命を果たそうとしないなんて、そしてそれを罪とも思わないなんて、

 挙句同性同士で愛し合うなんて、

 強烈に劣等な遺伝子を持ち合わせているか、

 先天性の脳障害なんじゃないの。同性愛者って」

女教師はそう言い放った。

僕は担任の女教師が大嫌いだった。

家庭内だけではなくクラスの中でも浮いていて、

あまり話し相手も居なかった僕だが、偶然耳にした噂があった。

英語の伊藤先生と、担任の女教師が良い関係だという。

確かにそれらしい噂ではある。

とは言え、30代前半の独り身の男性と、20代の同じく独り身の女という、

結婚を前提にした関係になり得る組み合わせが

たまたま同じ職場に居るからと言って、

必ずしもそういう関係になる由も無いだろうと、

僕はその噂を幼稚な他愛も無い戯言と処理した。

しかし、僕はある時さりげなく、冗談交じりに伊藤先生に訊いた。

「伊藤先生。噂になってますよ。

 ……僕の担任と、良い感じらしいじゃないですか」

伊藤先生は一瞬何の事かと目を丸くさせたが、

すぐに得心し、少し頬を染めて答えた。

「いやあ、参ったな。皆気が付くものだな。

 駒だけには言うけど、内緒にしてくれよ。

 実は今度の週末に、二人で映画を見に行くんだ。

 いや、まあ、だ、だけどまだ、別にそういう関係じゃなくてだな……」

照れくさそうに言い訳をする伊藤先生に、僕は笑顔で

良かったですね、と言うと、

伊藤先生も小さく、ああ、と答えた。

とても嬉しそうだった。

僕はその日の帰り、剃刀を買い

家で左手首を切った。

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