僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

雨と夢のあとに  その3

時刻は既に20時を回っていた。
お互い帰って何かを作る気にもなれず、
一緒に何か食べようという話になった。
「俺×Bは良い店知らないからなあ。
 駒ちゃんどっか良いとこ知ってる?」
 
「自分も×Bは初めて来たんで、
 よく解らないです」
 
「じゃあ、なんか食べたいもんある?
 食べたいもん決めてお店探そう」
 
「それじゃあ、焼き鳥食べたいんで
 鳥貴族にしましょう」
 
昨晩のピザといい、今日の服や靴や年間パスポートやらで
散々亘に散財させてしまったので、
知りうる限りの安い店を提案した。
 
「トリキ! 流行ってるけど俺行った事ないんだよね。
 じゃ、トリキにしよう。楽しみ」
 
結局どこへ行っても亘にご馳走になってしまうのだから、
予め安い店にしておけば罪悪感も薄れると言うものだ。
 
早速亘はスマホで最寄の鳥貴族を調べ、予約した。
それまでは引き続きスタバで時間を潰す事になった。
土曜の夜だから鳥貴族は大いに混雑しているようだ。
 
「ねね、トリキの後さ、駒ちゃん家泊まりに行っても良い?」
 
げ、と思った。
幸い、つい先日大掃除をしたので今は綺麗になっているが、
亘のあの広くハイセンスな部屋を見せられた後に
自分のあのこっ狭い部屋を見せるのは気が乗らない。
それも駅から徒歩20分。
 
「……どうしても、ですか?」
 
「うん」
 
亘は毅然として答えた。
 
「解りました。でも、汚いし狭いし、駅からもかなり歩きますよ」
 
「うん。全然良いよ。駒ちゃんの事もっと知りたいし」
 
「解りました」
 
「内心ヤだなって思ってるでしょ?」
 
「はい」
 
亘は笑った。
 
「俺、駒ちゃんのそういう所、好きかも。
 嘘つけないもんね、駒ちゃん」
 
「僕、大嘘吐きですよ」
 
「またまた~」
 

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そうこうしている内に予約の時間が近付き、鳥貴族へ向かった。
店内は大繁盛している。
 
予約の時間を過ぎても10分程待たされ、
それからやっと席に通された。
対面式の席が空いてなかったらしく、
横並びのカウンター席だった。
とりあえずビールと焼き鳥を数本頼んだ。
 
これだけ混んでいてはすぐに出て来ないだろうと思っていたが、
ビールはすぐに出て来た。
 
「じゃあ、お疲れっ」
 
亘が僕のグラスに自分のグラスをぶつける。
慌てて僕も自分のグラスに手を添えた。
 
「あ、お疲れ様です。
  今日は何から何までありがとうございました」
 
「楽しんでくれた?」
 
「勿論です。ただ、あんなに高い服とブーツ……。
  僕には勿体無い気がしますが、本当にありがとうございます」
 
「いいって、いいって」
 
亘は見ていて気持ちの良い飲みっぷりで、
あっと言う間にビールのグラスを空にして、
即お代わりを注文していた。
 
「亘さん、あんまり飲み過ぎないでくださいね。
 うち、本当に駅から遠いから……。
 来てもらうのはいいですけど、酔った亘さんを
 背負いながら家まで歩くのだけは御免です」
 
「あはは、解ってるよ。
 駒ちゃん家、楽しみだなあ」
 
僕と亘は鳥貴族で満足行くまで散々っぱら飲んで食べて、
店を出る頃には時刻は23時になっていた。
終電まではまだ余裕があるが、駅からの道程を考えると
そろそろ急いだ方が良いと思った。
 
亘と共にJRのS線に乗り込む。
S線はいつ乗ろうが常に混んでいる。
早く乗り換え駅に着かないかな、と考えていると
臀部に違和感を覚えた。人の手だ。
人の手が僕の尻をまさぐっている。
 
……と言うか100%亘の手だった。
 
「亘さん、ポリ公につき出しますよ」
 
「なんだあ、ちょっとぐらい。ひでえや」
 
酔いが回った亘はヘラヘラ笑っていた。
 
電車をS線から乗り換えて1駅。
最寄り駅に着いた。ここからアパートまで更に20分程歩く。
 
「ほら、亘さん。ここから20分ですよ。
 歩けますか」
 
「ん、大丈夫、大丈夫。ゆっくり行こうね」
 
亘は大分酔っていたが、この程度なら歩いている内に
酔いも醒めて、ちゃんと辿り着けるだろう。
安心し、2人で歩みを進めていった。
 
途中でコンビニに寄った。
丁度家の食料が尽きてしまっていたので、
明朝食べるものを買った。
亘はそれに加えてビールも買おうとしていたが、
冷蔵庫にビールだけは複数本入っていたのを思い出したので、
その旨を伝えて止めさせておいた。
その代わりに亘はつまみになりそうなスナック菓子をいくつか買っていた。
 

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アパートに着いた。
亘の部屋とは大違いで、一緒に玄関で靴を脱ぎ履きする事なんて出来ない。
僕はまだ慣れないブーツを脱ぐのを待ってもらい、
脱ぎ終えてから亘にも靴を脱いで部屋に入ってもらった。
 
「へえ、これが駒ちゃんの部屋か。
 確かに狭いけど、なんか落ち着くよ」
 
長距離を歩き、酔いが醒めつつあった亘が感想を述べた。
 
「座布団も無くて恐縮ですけど、適当に座っててください。
 今ビール出しますから」
 
「あ……ごめん、着替えたいんだけど、
 何か俺でも着られるような服ってある?」
 
「ああ、それなら×Bで買ってくれば良かったですね。
 うーん、ちょっと待っててください」
 
何か亘のサイズに合いそうな服はあるだろうか。押入れを探した。
 
辛うじて何かで貰ったオーバーサイズのTシャツが
出て来たが、下に着られるような物は見つからなかった。
 
「すみません、このTシャツだけしか無いです」
 
「じゃ、下パンイチでもいい?」
 
僕が答えるより先に、亘は服を脱ぎ始めた。
亘に服を掛けるハンガーを渡してやると、
ジャケットとシャツをハンガーに掛けて、
ズボンは丁寧に畳んで部屋の隅にやった。
そしてTシャツを着る。丁度良いサイズだった。
 
Tシャツとボクサーブリーフ姿になった亘は、
それだけですごく性的だった。
普通の男ならただのだらしない格好に見えるだけだろうが、
端整な顔立ちに筋肉質な身体の亘がこの格好になると、
直視出来ない程の色香が漂ってくる。
僕はその色香に捕らわれているのを気付かれないように
振舞うので精一杯だった。
 
少しだけ晩酌をし、二人で交代でシャワーを浴び、
布団を敷いた。
僕の布団は当然二人で寝るには小さかったし、
枕も1つしかない。
窮屈でしかない筈なのに、亘は嬉しそうだ。
 
「今夜もまた駒ちゃんと一緒に寝られるなんて、
 本当に嬉しいよ。かわいいなあ」
 
「はあ、そりゃどうも」
 
僕はわざとつっけんどんに返したが、
内心では心臓の鼓動の高まりを抑えきれずにいた。
(続く)

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