僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

雨と夢のあとに  その4

「駒ちゃん……」
 
亘はそう囁くと、僕を抱き締めた。
亘と夜を共にして。
亘と同じ寝具に寝て。
亘の胸に抱かれて。
筋肉質な身体。逞しい腕。端整な顔立ち。
僕を抱く腕の力の加減に、亘の単なる優しさでは無い、
紛れも無い愛情を感じて、
震えが止まらない。
 
しかし僕は怖かった。何故なら、僕は空虚だから。
僕には何も無い。空っぽだった。
例え今は亘に愛されたとしても、
いずれ僕の空虚に触れた亘がどんな横顔を覗かせるのかを
想像すると、恐ろしくて堪らなかった。
 

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亘の胸に耳を当て、その鼓動を聞いていた。
ずっと聞いていたかった。
時が止まってしまえば良いとすら思った。
僕は常に死にたいと思って来たが、今この瞬間だけは別だった。
亘と共に生きて、この鼓動を聞いていたい。
僕にとって、生きる事とは悲しみ。苦しみ。怒り。
そして孤独。
独りで生きて独りで死んで行く。それが僕の生涯。
 
そんな中に投げ込まれた亘という名の愛情は、
きっと僕の人生を明るく輝き照らすだろう。
しかし、いつしかその愛情が潰える時が訪れたとして、
僕はどうしてそれからの日々を暮らすだろう。
それだけが怖かった。
 

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亘が不意に抱擁を解いた。
そして、僕の左手首の傷痕を撫ぜながら言った。
 
「駒ちゃん、もう死のうだなんて思わないでね」
 
僕は何も答えられずにいた。
 
「はい、約束」
 
亘は自分の小指を軽く曲げながら、僕の眼前に差し出した。
 
僕は恐る恐る自分の小指を亘の小指に絡ませようとしたが、
やはり怖くなって引っ込めてしまった。
 
「仕方ないな……。
 それじゃあ、死にたくなったら、いつでも俺のところにおいで。
 いつでも気が済むまで傍に居てあげる」
 
亘の甘く優しく囁く声に、僕は思わず泣きたくなった。
不思議だった。
亘が優しくしてくれればくれる程に、
僕は泣きそうになったり、悲しくなったり、
逃げ出したくなったりする。
 
「また、水族館一緒に行こうね」
 
亘は僕の頭を撫で、唇に軽い口付けをすると、
再び僕を抱き締め、おやすみ、と言って目を瞑った。
僕もまた、亘の心臓の鼓動を聞きながら、
徐々に眠りへと落ちていった。

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