僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

ルッキズム

つい先月の9月の頭頃、職場に中途で新しい人が入ってきた。
ここでは名を犬飼さんと呼ぶ事にする。
 
犬飼さんは僕より1個下の男性で、
背が180センチぐらいのすらっとした長身で、何よりイケメンだ。
俳優で例えると妻夫木聡良く似ていて、
それだけでも女性社員やアルバイトの女子達から
熱視線を浴びていると言うのに、
明るくて人懐っこく、男性社員からも実に良く可愛がられている。
また、大勢の女子達と過ごす事にも抵抗が無いようで、
頻繁に女子達から昼食に誘われている。
 
はっきり言ってこの職場には、彼の様に
ハンサムな男性職員は今まで一人として居なかったので、
僕も日がな一日、犬飼さんを眺めて過ごす事も多い。
 

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そんなある日、犬飼さんが僕に話し掛けてきた。
口を利いたのはこれが初めてだったかも知れない。
丁度お昼の休憩に入る所だった。
 
「駒さん!
 今日、自分もお昼ご一緒していいっすか?」
 
今日も女性陣と食事に行くのかと思い込んでいた僕は、
犬飼さんからの突然のお誘いに少々面食らったが、応えた。
 
「え、あ、はい、いいですけど」
 
「やった! 一度駒さんとお話してみたかったんっすよ、自分。
 普段誰ともあんまりお話されてないじゃないすか。
 だからどんな方なのかな~って気になっちゃって」
 
それには大きな理由があるのだが、彼はまだ知らないらしい。
この職場での僕の微妙な位置付けを。
 
まぁいいか。そう思って気軽に引き受けた。
 
「はぁ、じゃあ、行きましょうか」
 
「はい!」
 
犬飼さんは目を輝かせながら、色んな話をして来た。
自分の血液型の事。出身地の事。大学の事。
僕が静かなせいで、気を遣っての事だったのだろうが、
あまりに色んな事を聞かされた為内容は殆ど覚えていない。
 
「で、どこ行きましょうか」
 
「駒さんがいつも行ってる所に行きたいっす!」
 
「それじゃあ、いつも行ってる定食屋さんがあるんで、そこで」
 
僕がいつも行く定食屋は安くて美味しいと評判で、
いつ行っても混んでいて、一人で行くと相席を求められる事もあるぐらいだ。
だが、今日は比較的空いていて、すぐ2人席へ通された。
 
犬飼さんは座るなりランチメニューを開いた。
 
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な~っと。
 今日の日替わりって何だろう……。
 あっ、でも俺、から揚げ定食にしよっと。
 決まりました!」
 
「僕も決まりました」
 
「そうっすか! 何にされたんすか?」
 
「肉じゃが定食です」
 
僕がそう言うなり、犬飼さんはすいませーん、と
店員さんを呼び止め、注文した。
 
それから料理が届くまでの間も、犬飼さんのマシンガントーク
途切れる事無く続いたが、その内容はここでは省略する。
 
二人分の定食が同時に届いた。犬飼さんはいただきます!と手を合わせて言って食べ始めた。
食べっぷりが良く、見ていて実に美味そうに食べる。
男性職員にも人気がある理由が何となく解った気がした。
 
僕も食べ始め、味噌汁を啜った瞬間だった。
 
「駒さんもコッチの人なんですか?」
 
思わず啜った味噌汁を噴出してしまう所だった。
僕は咽ながら聞き返した。
 
「コッチって、どういう意味ですか」
 
「いやもう、それは言わなくても解ってくださいよ~」
 
やっぱり僕はモロバレしているのだろうかと
落ち込んでいると、犬飼さんは辺りを見回し、
声のボリュームを落とし、僕の耳に囁いた。
 
「でも安心してください。誰にも言わないんで。
 ――それに実は、俺もなんっすよ」
 
実にぶったまげた。犬飼さんもゲイだったのか。
全くそんな気配を感じさせず、ノンケにしか見えなかった。
 
「その話がしたくて、今日僕を誘ったんですか」
 
「えっと、まあ、そうっすね」
 
仕方なしに答えた。
 
「そうですよ。僕も同じゲイです。
 でも面倒なんで、誰にも言わないでください」
 
「お互い様っす! 
 駒さんだったら口堅そうなんで、
 思い切って言ってみたんっす。
 二丁目とかは行くんすか?」
 
「最近は滅多に行かないですけど、
 『F』に良く行ってました」
 
『F』っすか。名前は聞いた事あるんすけど、
 行った事は無いっすね」
 
それきりお互い何だか気まずくなってしまい、
食べ終わるまではお互い無言だった。
 
 

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「……駒さん、彼氏とかは」
 
「居ません」
 
犬飼さんが言い終えるより先に僕は答えた。
 
「俺も今はいないっす。
 でもまあ、居ない方が気楽っちゃ気楽っすよね~」
 
僕は頷かなかった。犬飼さんはしまった、という顔をしていた。
 
しかし年下相手に気を遣わせているのも可哀想だなと感じ始めたので、
僕は努めて明るく言った。
 
「まだお昼休み大分時間残ってますね。
 コンビニでアイスでも買って食べませんか?
 ご馳走しますよ」
 
「アイス! めっちゃ食いたいっす。
 早速行きましょう!」
 
そう言うと犬飼さんは伝票をレジまで持って行くと、
僕の分まで支払っていた。
 
「えっ、悪いですよ」
 
「あとでアイスご馳走になるんで、おあいこっす!
 それに誘ったのも俺っすから。
 これからはコッチ同士って事で、仲良くしてください」
 
定食屋を後にし、コンビニでアイスを買って食べつつ引き続き話した。
 
「あ、駒さん、Line教えてくださいよ!」
 
「いいですよ」
 
犬飼さんとLineのIDを交換した。
そういえば、職場の人とLineを交換したのはこれが初めてだった。
 
「今度飲み行きましょう!
 俺、駒さんの事めっちゃ知りたいんで。
 もっとここじゃ出来ない話とかもしたいっすからね」
 
「それは嬉しいです。是非行きましょう」
 
確かに犬飼さんはイケメンだ。
それでいて信頼における男だとも思う。
きっと彼なら僕がゲイだ、と触れ回る心配も無いだろう。
しかし、同じ職場に同じゲイが居るというのは
なんだか変な感じがする。
 
「明日もまたお昼ご一緒させてもらってもいいっすか?」
 
犬飼さんはにっこり笑って僕に尋ねた。
何かを予感させる様な気配を薄っすらと漂わせながら。
 
「はい。勿論です」
 
まあ、イケメンだし、いっか。
僕は適当に自分で自分を言いくるめた。

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