僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

冷たい雨が頬を濡らして

金曜日の夜、僕と犬飼さんは定時に上がり、
約束通り新宿三丁目の鳥貴族へ呑みに行った。
 
週末の夜という事で当然待たされたが、
今回は普通のテーブル席に案内された。
犬飼さんは席に着くなり、暑い暑いと言いながらスーツのジャケットを脱ぎ、
Yシャツの袖をまくった。
僕は厚手の上着を脱いだが、それでも下は厚着だった。
それを見た犬飼さんが言った。
 
「駒さんって、本当に寒がりなんですね」
 
「寒がりって言うか、今日めっちゃ寒いですよ。
 どっちかというと犬飼さんの方がやばいですよ」
 
「自分、健康優良児なんで!」
 
「児、って」
 
僕は笑った。もう『児』と呼ばれる歳でもないだろうに。
 
とりあえずビールと、焼き鳥を何本か頼んだ。
 
「駒さん! 酒入る前にハッキリ聞いておきたいんすけど」
 
「はい」
 
「俺の事、好きですか?」
 
「は?」
 
「嫌いですか?」
 
「え?」
 
僕は困惑した。犬飼さんの質問の意図が全く読めない。
なので、正直に質問してみた。
 
「それはどういう意味で、ですか?」
 
「いやもう、好きか嫌いかっていう、
 ただの二択っすよ。単純に」
 
「答えになってないですけど……。
 とりあえず、嫌いだったらこうして2人で飲みに来る事は
 ないでしょうね」
 
「じゃあ、好きって事でいいんすか!?」
 
「まだお互いがお互いを知らなさ過ぎるので、
 恋愛対象としてはまた別ですよ」
 
「な~んだ。ちぇっ」
 
ビールと焼き鳥が運ばれて来た。
犬飼さんはガンガン食って飲んでいく。
 
「犬飼さんって、お酒強いんですか?」
 
「俺はもうザルっすね。滅多な事じゃ酔わないっす」
 
何となく、この人は出世が早そうだなと感じた。

 

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会計の段になり、犬飼さんは全額支払うと言った。
他の人なら止める所だが、
犬飼さんの食いっぷりと飲みっぷりから考えると、
割り勘は分が悪いと思ったので、お言葉に甘える事にした。
 
鳥貴族を出ると、新宿は冷たい雨だった。
思わず身震いする。
自分の手持ちの折り畳み傘を開こうとしたら、
犬飼さんから止められた。
 
「駒さん、折畳み傘なんかじゃ濡れちゃいますよ。
自分の傘デカいんで、中入ってください。ほら」
 
犬飼さんはそう言いながら僕に傘を差し出した。
 
確かに犬飼さんの傘は大きい物だったが、
2人で入ると大柄な犬飼さんの肩がはみ出て濡れてしまっていた。
僕はそれを気にして遠慮しようとしたが、
犬飼さんは暑いから丁度良いと言って雨に肩を濡らしていた。
 
「これから、どうします?
 まだ終電まで時間ありますけど」
 
「何言ってるんすか。今夜は帰さないっすよ?」
 
犬飼さんはにやりと笑った。
僕は悩んだが、明日からは連休だし、
久しぶりにオールで呑むのも悪くないかなと思ったので
犬飼さんと共に2丁目へ向かった。
 
仲通りの交差点に着いた。二丁目のど真ん中だ。
見上げると大きい広告がある角で立ち止まった。

 

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「さて、どこ行きましょうか」
 
犬飼さんは答えず、代わりに突如として傘を放り投げた。
全身が雨に晒される。
僕の髪を、僕の服を、僕の頬を、そして犬飼さんを
雨が濡らす。
犬飼さんは力強く僕を抱き留め、口付けをしてきた。
昼間やられた様な軽いものではない。
無理矢理舌で僕の唇をこじ開けて中に入ってくる
ぐちゃぐちゃした口付けだ。
 
犬飼さんは散々僕の口腔内を己の舌で侵し尽くした。
僕が何も抵抗しないのを良い事に何分もそうやっていた。
 
ようやく犬飼さんは唇を離すと、
傘を拾い僕と自分の頭上に差した。
しかし僕達はすっかり雨に濡れてしまった。
 
「満足しましたか」
 
僕は嫌味たっぷりに言ってやった。
 
「いや、あの、その、俺、そんなつもりじゃ……。
 駒さん見てたら、我慢出来なくなっちゃって」
 
僕は完璧に頭に来ていた。
 
「盛りのついたガキどもと一緒ですね。
 脳味噌も筋肉になっちゃってるんじゃないですか?
 誰が喜ぶかよ。何が我慢出来なかった、だよ。
 昼間も言おうと思ったけど、お前ふざけんなよ。
 いい加減にしろよ」
 
「す、すいませんっした……」
 
犬飼さんはこんな雨の中、大きな肩を竦め、
すっかり小さくなっている。
 
でかい男が弱弱しくしているさまが余計癇に障って、
僕は犬飼さんの脇腹に肘鉄を喰らわせた。
 
「お、俺、駒さんと2人きりで呑めて、嬉しくて、
 それで嬉しくなって、その……」
 
とうとう犬飼さんは泣き出してしまった。
まさか泣かせてしまうとは思わなかった。
犬飼さんはしゃくり上げて泣いている。
これでは余計周囲の注目を浴びてしまう。
 
「ああ、もう。もういいですから。
 気持ちは解りました。嬉しかったんですね。
 そう思ってくれたのは僕も嬉しいですよ。
 ただいきなりだし、強引過ぎるんです。
 それだけ気をつけて貰えれば良いんで、
 もう泣かないでください。ね。
 ほら、ハグしてあげるから、泣かないで」
 
僕は子供の様に泣きじゃくる犬飼さんを抱き締めてやった。
それでも中々泣き止んでくれずに困った。
背伸びをして頬にキスをしてやると、
涙でしょっぱい味がしたが、
何とか徐々に泣き止んでくれた。
 
「今夜、一緒に、居てくれるんすか?」
 
「はい、朝まで一緒に居てあげますから。
 このままじゃ風邪引いちゃうから、
 とにかくどこかお店に入りましょう」
(続く)

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