僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

何時だって雨が只此処に降り注ぐ

色々考えた結果、今の犬飼さんの精神状態で
飲み屋に入るのは危険だと判断した(また何かの拍子で泣き出すのではないかと危惧した)ので、
まずワンクッション置く事にして、二丁目近くのジョナサンへ行った。
 
甘いものでも食べさせようと思ったのだ。
精神的に落ち込んでる人にパフェを食べさせると
気を持ち直すと何かで聞いたので、
それを実行してみる事にした。
 
雨に濡れそぼった肩を竦めたままの犬飼さんに、
僕は努めて明るく話し掛ける。
 
「ほら、犬飼さんの好きそうなの色々ありますよ。
 甘いもの好きでしたよね。パフェとかどうですか」
 
「じゃあ、チョコバナナパフェでいいっす……」
 
犬飼さんはすっかり気落ちしてしまっている。
確かに可哀想な事をしたかも知れないなと僕は反省した。
 

f:id:komadiary:20171009224529j:plain

 
とりあえず注文する。
 
「すみません、チョコバナナパフェ2つ」
 
かしこまりました、と言って店員さんは厨房へ消えていった。
 
「……雨、止まないですね」
 
「……そうっすね」
 
犬飼さんの瞳から光が完全に消えている。
おまけに話題も無いと来たものだ。
2人の間に気まずい時間が流れる。
 
「仕事で悩みとか、ないですか」
 
「特に無いっすけど……
 やっぱ彼女の話とか聞かれると困りますね」
 
「それは……そうでしょうね」
 
それきり話は途切れてしまった。
 
間も無くして、パフェが2人分運ばれて来た。
 
「ご注文は以上でよろしいでしょうか」
 
「はい」
 
「では、ごゆっくり」
 
犬飼さんは早速食べ始めようとしたが、
僕はそれを制止した。
犬飼さんはきょとんとして僕を見つめている。
 
罪滅ぼしを、と考えたのだ。
僕は自分のパフェを適当にスプーンで掬い、
犬飼さんの眼前に突き出した。
 
「はい、あーん」
 

f:id:komadiary:20171009224551j:plain

 
恐る恐る犬飼さんは僕のスプーンに口をつけた。
 
今度はクリームに突き刺されたスティック状のクッキーをつまみ、
べっとりとクリームをつけて、また犬飼さんの口元に差し出す。
サクサクと音を立てて食べ進める犬飼さんの口にわざと指を入れて、指を引き、
僕はその指を舐めてみせた。
 
「ほら、犬飼さんも食べてばっかりじゃなくて、
 僕にも同じ事、してください」
 
ぱあっと犬飼さんの顔が明るくなった。
 
僕と犬飼さんは今時どこのカップルでもやらない様な
食べさせっこをした。
つい先程までこの世の終わりの様な顔をしていた犬飼さんは、
パフェを食べ終える頃にはにっこにこの笑顔になっていた。
 
これなら飲み屋で泣き出すような事態にはならないだろう。
そう判断し、ジョナサンを後にした。
 
『F』に向かおうと思う。
(続く)

にほんブログ村 セクマイ・嗜好ブログ 同性愛・ゲイ(ノンアダルト)へ