僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

大人の男は吼えたりしない

アルバイトの身には伝達されていなかったが、今週に入ってから上長が異動になった。
話に聞く限りでは栄転だそうだが、送別会1つ開かれなかった所を見ると、
上長を嫌っていたのは僕だけでは無かったようだ。

 

そこで今日から別の事業所から
新しく上長のポストになる人が異動して来る訳なのだが、
始業15分前になっても現れない。
 
10分前になっても現れない。
 
5分前になっても現れない。
 
いよいよ社員達が焦り始めた。
前の上長であれば有事以外には有り得なかった事だ。
 
あと2分。ようやく現れた。
急ぐ気配は皆無で、のんびりとタイムカードを打っていた。
 
れが新しい上長か。
髪はぼさぼさ。スーツはよれよれ。鞄も靴もおんぼろで、髭は生え放題。
そしてむせ返る程の煙草の臭いを漂わせている。
しかし顔が非常に整っていて、浅野忠信を少しやつれさせた様な感じだった。
手足もスラリと長く、スタイルも悪くない。
それにちなんでこのBlogでは、この新しい上長を
浅野(忠信)さんと呼ぶ事にする。
 
バイトの女子達が少し色めき立っていた。
ダンディで素敵、みたいなひそひそ話をしている。
 

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始業時間になり、朝礼が始まった。
退屈な業務報告に続き、今日は特別に
新しく上長となった浅野さんに自己紹介をしていただきましょう、と言う運びになった。
女子達がまた色めきだった。浅野さんの話が始まるまでは。
 
浅野さんは頭をぼりぼり掻きながら、嗄れ声で話し始めた。
 
「おはよーございます。浅野忠信と言います。
 41歳です。一般的には初老ですが、アッチはまだビンビンです。今朝も小便する時大変でした。
 バツイチです。男性職員の皆さん、結婚は地獄です。
 気を付けてください。
 あとそれから俺両刀(※バイセクシャルの意)なんで、
 興味あるコは男女問わずどうぞ。俺今シングルなんで」
 
拍手1つ起きなかった。
女性陣に至ってはドン引きで、せっかくのルックスなのに
高感度は地に落ちてしまったようだ。
 
「――てなわけで、よろしくね~。
 あ、そうそう。俺、上長って呼ばれるのなんか嫌だから、
 皆俺の事は苗字で呼んでください。以上!」
 
こうして朝礼は終わったのだが、浅野さんは朝礼が終わるなり
即喫煙室へと消えていった。
 
なんでこんな人が上長になれたのだろう、と誰もが思っただろうが、
僕は緩そうな人だから仕事が適当に出来そうで良かったと安心した。
 
午後2時頃。浅野さんが手をひらひらと上げて呼び掛けた。
 
「誰か~、Wordの先生はいませんか~。
 教えてくださ~い」
 
誰も答えない。
 
「ねえ~、誰か~」
 
「……はい、今伺います」
 
僕は見かねて仕方なく答えてやった。
浅野さんの席へ向かう。
 
「おっ、ありがとう。君、なんて言ったっけ」
 
「駒です」
 
「駒くんね。んじゃ、よろしく」
 
「で、どこが解らないんですか?」
 
「え~……大まかに言うと、全部」
 
僕は呆れた。しかし、自ら名乗り出た手前、
最後まで面倒を見てやろうと決めた。
 
「Wordの基本はですね、まず改行とかも一切入れずに、
 バーッて全部の文章を打っちゃう所から始めるんです」
 
「じゃ、打ってよ」
 
僕は再び呆れた。
 
「そればっかりは僕の仕事では無いですし、文章だって
 ご自身でお考えになられたものじゃないと……」
 
「ちぇっ、めんどいな~。
 じゃあ打ち終わるまで待ってて。後で呼ぶから」
 

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1時間半後。
 
「駒く~ん、出来たよお」
 
「はい、今参ります」
 
一応ちゃんとした文章になっていた。
教えながら体裁を整えてやる。
その間、中腰で浅野さんのPCを操作していたのだが、
浅野さんがそれを見て言った。
 
「その姿勢、辛くない?」
 
「あ、まあ大丈夫ですよ」
 
「良かったら、ここ、座って」
 
ここ、と、ぽんぽんと叩いて見せたのは
浅野さんの右膝だった。
無視を決め込もうと思ってPCに再び向かおうとしたら、
今度は無理矢理僕の腰を引いて膝の上に座らせられた。
 
「こうしてれば楽でしょ」
 
「重たくないですか? っていうか、他の人達から
 変な目で見られますし、止めといた方が……」
 
「ギャラリーが居る方が興奮しない?」
 
僕はまた無視をした。浅野さんは今度は笑うだけで、
特に何もして来なかった。
 
ようやくきちんとした書類になった。
 
「おー、流石大先生。今後もよろしくね」
 
そう言いながら自然に装いつつ僕を後ろから抱き留めた。
 
「あの……自分も仕事戻らないといけないんで」
 
「これもシ・ゴ・ト。
 駒くんかぁ。駒ちゃんって呼んでもいい?」
 
「ご自由になさってください」
 
「駒ちゃん。
 君、可愛いねえ」
 
浅野さんはにやにやしている。
不意にシャツの下から手が入ってきた。
浅野さんの、がさがさした大きな手だった。
その手は僕の胸元に辿り着くと、僕の乳首を弄び始めた。
 
「あっ……ん」
 
「おーう、良い声出すねえ。
 おじさん、今ので息子が元気になってきちゃったよ
 
「せっ、セクハラですよ!」
 
「解った解った。可愛いからやり過ぎちゃった。
 続きは今度、ベッドの上で、な」
 
浅野さんからようやく開放された僕は、乱れた着衣を直しながら
自席へ戻った。
いらいらしながら浅野さんの方を見たら
丁度目が合ってしまい、ウィンクされた。
 
何なんだあのおっさんは。
 
定時の1時間前。浅野さんがオフィスに居る全員に呼び掛けた。
 
「間も無く定時でーす。
 俺は定時で帰りたいんで、皆もキリのいい所で終わらせられるように
 ラストスパート頑張ってかけてな~」
 
呼びかけて1時間後、定時きっちりに浅野さんはタイムカードを切って
即行で帰って行った。
他の社員達もキリ良く仕上がったらしく、
次々にタイムカードを切って帰っていく。
僕もタイムカードを切って帰る。
 
しかし、本当になんなんだろう。あの人は。
何故あの調子であのポストまで辿り着けたのか。
悶々としながら帰路についた。

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