僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

大人の男は何も厭わない

今日も浅野さんは始業2分前に現れた。
しかし、今日の浅野さんは昨日と大きく違っていた。
 
髪はばっちりセットされてあり、
とても品の良いスーツに身を包み、
小洒落たネクタイを締め、
ブランド品であろう鞄を手に提げ、
ピカピカで高級そうな革靴を履いていた。
唯一髭は剃っていなかったが整えられており、
良い具合にワイルドさを醸し出している。
そして今日はタバコ臭ではなく、
嫌味のない良い香りがするコロンの匂いを身に纏っていた。
 
また女子達が色めき立った。
朝礼後、ある女性社員が浅野さんに訊いていた。
 
「今日はどうされたんですか?
 昨日と大違いじゃないですか。
 こんなにお洒落なんだったら、
 昨日からそれで来れば良かったのに」
 
「うん、ヤりたい子が出来たから」
 
外見は変わっても中身は据え置きの浅野さんは、
せっかく上がりかけた女子達の評判をまた地に下げていた。
 
最近とんと暇な僕の事業所は、午前中の早い段階で大体の仕事は
終わってしまっていた。
皆やりたい放題だ。浅野さんは喫煙室から
もう1時間は帰ってきていないし、
隣の男性社員は鼾をかいて居眠りをしているし、
向かいの席のアルバイトの女子なんかは
マニキュアを塗っている。
 
かくいう僕もこうしてBlogの記事を書いている。
そんな所に浅野さんが帰って来た。
僕の席の後ろを通過する瞬間、僕の肩に手を載せて
画面を覗き込んできた。
 
「駒ちゃ~ん、何やってんの?」
 
「Blog書いてます」
 
僕は正直に答えた。
 
「まずいですか?」
 
「いいんじゃない、ヒマだし。
 どんなの書いてるの?」
 
「今まさに浅野さんの事書いてますよ」
 
「あら、そんなに俺の事好き? セックスしよっか?」
 
僕は今朝頂いたコメントを浅野さんに見せてやった。
 
「退職勧告か懲戒免職の対象ですって。
 本部に通告しようかな、昨日の事」
 
浅野さんはげらげら笑い出した。
 
「これで懲戒免職喰らってたら、
 俺いくつ首あっても足りないわ~。
 ごめんごめん。
 昼飯奢ってあげるから、許して」
 
「お昼は犬飼さんと行くんで……」
 
「今日は駒ちゃんと面談したいのよ。
 これ、マジでちゃんとしたお仕事のお話」
 
じゃ、よろしく、とふらふら僕の席から離れていった。
僕の向かいの席のマニキュアを塗っている女子の所に行って、
器用だね、良い色だね等といって褒めていた。
 
僕は犬飼さんの席へ行った。犬飼さんはイヤフォンを着けて
TOEICの勉強をしていた。肩を叩くと驚いてこちらを振り向いたが、
僕だと解ると笑顔になった。
しかし今日はお昼は一緒に行けないと伝えると、
しょんぼりしていた。相変わらずかわいい奴だなと思う。
 

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間も無くしてお昼の時間になった。
 
浅野さんが僕を連れて行った先は、
S×駅から少し行った所にある、
小洒落たフレンチレストランだった。
ランチなのにコース形式で料理が出てくる。
 
「こんなに豪勢な所で大丈夫なんですか?」
 
「大丈夫大丈夫。経費で落ちるから」
 
浅野さんはナプキンをワイシャツの首に引っ掛けながら答えた。
仕方なく僕も首元にナプキンを掛けた。
 
一品目にかぼちゃの冷製スープが出て来たのだが、
浅野さんはスプーンも使わず
容器の取っ手を掴んで豪快にゴクゴクと飲み出した。
流石に躊躇われたが、僕もそれに合わせた。
店員さんも引き気味だったが、とりあえずお皿は下げてくれた。
 
浅野さんは手帳を取り出して開き、訊いてきた。
 
「で、どうですか、お仕事は。困ってる事とかない?」
 
「新しい上長がセクハラしてくるので困ってます」
 
「困ってない……っと」
 
浅野さんは手帳に書き込んだ。
 
「いや、困ってますから」
 
「で、最近、亘さんって方とはどうなの?
 仲良くやってる?」
 
「この間、お宅にお邪魔しました」
 
「へえ、そりゃ良かった。それならうちの会社は安泰だ」
 
浅野さんは再び手帳に何か書き込んでいた。
今度は長めに書いていた。
 
 

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「お聞きになられたい事はそれだけですか?」
 
「う~ん、そうだな。
 そしたら、今週末の土曜日の予定は?」
 
「……ありませんけど、何でですか」
 
「俺と、デート、してください」
 
「僕、そんなに安く見えますか」
 
「まさか! 心からのお願いだよ。
 いいじゃん、セックスしなくてもいいから」
 
「まあ、セックスしない前提なら……。
 あと、職場でセクハラ止めてくれるならいいですよ」
 
「解った! もう変な事言わないようにする!」
 
「お触りもですよ」
 
「解った解った。んじゃ、11時待ち合わせね。
 一緒にお昼食べてどっか行こう。場所はちょっと考えさせて。
 あとLine教えて」
 
こうしてとんとん拍子で浅野さんとデートする羽目になってしまった。
 
「駒ちゃんとデートか~。
 おじさん、ウン年ぶりにうきうきしちゃうな~。
 何着て行こっかなっと」
 
浅野さんは実に嬉しそうに言った。
本当に何なのだろう。この人は。

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