僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

女の子になりたい

これは金曜日の日記だ。
立て込んでいて仕上がりが遅くなってしまった。
土曜日の日記はまた明日アップしたいと思う。
 
今日は早目に上がらせて貰って、
崇兄ちゃんの整骨院へ行って来た。
本来なら週2で来いと言われているのだが、
大体週1での通院になってしまっている。
 
早く上がらせてもらったはいいものの、
結局整骨院に着いたのは受付終了10分前だった。
診察カードを出す。
初めて受付の女が口を開いた。
 
「もう受付終了です」
 
「いや、あと10分もあるじゃないですか」
 
「いいえ、お断りします」
 
「おかしいじゃないですか。10分前受付終了なんて
 初めて聞きましたよ。今まで平気だったじゃないですか
 
受付で揉めていると、奥から院長――嵩兄ちゃんが出て来た。
 
「おお、駒。どうした?」
 
「この人が、もう受付終了だって」
 
「え、おかしくない? まだ10分もあるだろ。
 何やってんだよ」
 
嵩兄ちゃんに詰られ、受付の女は渋々
僕の診察カードを受け取った。
流石にかちんときた。
だが、嵩兄ちゃんの手前、何も言えなかった。
 
結局僕が一番最後の患者になって、案内された頃には
もう20時半を過ぎていた。
嵩兄ちゃんが施術してくれた。
やっぱり嵩兄ちゃんは他の先生より断然上手で、
思わず寝てしまうところだった。
 
「なあ、駒、この後時間あるか」
 
「あんまり遅くはなれないけど、あるよ」
 
「じゃあ、この近くで飲み行こうぜ。奢ってやるから。
 ちょっと院閉めるまで待ってもらうけど、いいか」
 
「うん、じゃあ、待合室で待たせてもらっていい?」
 
「ああ、いいよ」
 
僕を起こすとハグをして、頭をぐりぐりと撫で回して、
待合室へ行くよう促された。
 
感じの悪い受付の女の元で会計を済ませ、
待合室の椅子にかけて嵩兄ちゃんを待った。
 
1時間程して、他の先生達を見送り、
院内で嵩兄ちゃんと2人きりになった。
 
「もう出られる?」
 
「ん、ああ、……でも、ちょっとだけ、いいか?」
 
「何が?」
 
僕の問い掛けに嵩兄ちゃんは答えず、
きつく僕を抱き締めた。
 
嵩兄ちゃんが何だか切なそうな顔をしていたので、
僕もきつく抱き返してやった。
 
「……お仕事、お疲れさま」
 
「……別に仕事が辛いんじゃねえよ」
 
「僕で良ければ、話は飲みながら聞くよ」
 
「ありがとうな。お前はいつも優しいよ」
 
しばらく僕達はこうして待合室で抱き合って過ごした。
 

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居酒屋で席につくなり、嵩兄ちゃんは生2つと料理を
ガンガン注文し始めた。
 
「そんなに食べられないよ」
 
「そんなんだからお前はちっこいんだよ。
 きつくなったら俺がお前の分も食うから大丈夫だって」
 
「嵩兄ちゃん、食べる割に太らないね」
 
「仕事で鍛えてっからな。逆に食わないと務まらねえ」
 
生ビールのジョッキが2人分届いた。
とりあえず乾杯をして、話をした。
 
「俺さ、最近、自分が何のために生きてるのか解んねえんだよ。
 この歳になって結婚を前提にしてるような彼女も居ねえし、
 趣味も無くて、休みには寝てるぐらいでさ。
 気軽に会える様な友達も居ないし、
 恥ずかしいけど、寂しくて頭おかしくなりそうだ」
 
「僕が居るじゃない」
 
「お前にばっか頼ってたら悪いだろ」
 
「悪くないよ。僕も嵩兄ちゃんの力になれたらいいなって思うよ」
 
「じゃ、今夜お前んち泊まりに行ってもいいか?」
 
「いいよ。ただ明日朝早いし、布団1人分しかないけど」
 
「また一緒に寝てくれるのか?」
 
「うん」
 
誰にだって、誰かに傍に居て欲しい夜はあるだろう。
それが本来なら綺麗だったり、可愛かったりする女性であれば
どれだけ嵩兄ちゃんにとって良かっただろう。
 
それでも、崇兄ちゃんは嬉しそうに僕の頭を撫でた。
 
「僕、生まれ変わったら女の子になりたいな。
 そうしたら、嵩兄ちゃんと結婚出来るから」
 
「お前ってやつは……」
 

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殆どの料理と大酒を平らげ、崇兄ちゃんは完全に出来上がっていた。
酔っ払った嵩兄ちゃんが僕の隣の席へ移動してきて言った。
 
「お前、さっきの話だけどよ、
 俺はお前が男のままでも結婚してもいいかなって思うぞ。
 お前綺麗な顔してるしさ、小柄だし、優しいし、
 下手な女よりよっぽどいいや」
 
「日本じゃ認められてないし、
 お父さんとお母さんが悲しむよ」
 
「俺は俺の人生だから、関係ねえよ。
 俺はお前を幸せにするのが人生だ! ってな」
 
嵩兄ちゃんは最後の酒を呷って豪快に笑った。
 
店を出ると、嵩兄ちゃんは手を結んできた。
 
「やめなよ、患者さんに見られたら院の評判悪くなるよ」
 
「やめねーぞ。俺は一度決めたら絶対やめない男だからな」
 
諦めて、嵩兄ちゃんと手を繋ぎながら帰り道を歩く。
 
「なあ、覚えてるか?
 俺のファーストキス、お前なんだよ」
 
「そうだったっけ、ああ、そう言えばそんな事もあったね」
 
「童貞捨てたのは高校の部活のマネージャーだったけどよ、
 今にして考えてみたらあんなヤリマンより
 お前に捧げておきゃ良かったかもな」
 
「そういう話も、患者さんに聞かれたら――」
 
僕の家へ向かう道すがら、嵩兄ちゃんはずっとこんな調子だった。
 
家に着いた。
 
「早く布団敷いてくれ~。
 俺はもう寝るぞ~」
 
「はいはい、只今」
 
嵩兄ちゃんは服をぽいぽい脱ぎ捨て、
下着のシャツとパンツだけになり、
布団を敷いてやると即行で布団に潜り込んだ。
 
僕も酔いが回っていたのと、明日は朝早いので
パジャマに着替えた。
 
「よし、俺の未来の嫁よ、こっちこい」
 
嵩兄ちゃんは布団の中から手招きした。
布団に入ると、嵩兄ちゃんに抱き留められ、
その胸の中に収められた。
嵩兄ちゃんは酒臭かったが、体温が暖かくて心地良かった。
 
「今夜は冷えるからな。風邪引くなよ」
 
「うん、こうしてると暖かいね」
 
嵩兄ちゃんは急に真剣になって言った。
 
「俺とずっとこうしてたいか? 
 俺と、ずっと一緒に居てくれるか?
 
「――そうだね」
 
「そうか」
 
嵩兄ちゃんは僕を抱く力を強めた。
 
僕は自分を、最低で卑怯な人間だと思う。

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