僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

大人の男は焦らない その3

夢が叶った。
深夜0:30。
今、僕は、首都高へと向かう車の助手席に座っていた。

 

雨模様の上、寒さもあったから
窓は曇り気味だったが、それでも外を眺めつつ、
とてつもなくワクワクしていた。
 
「なぁんだ、こんなに喜んでくれるなら、
 最初っからドライブデートにすれば良かったかも」
 
「でも、夜だから嬉しいんですよ。
 夜中のドライブって、すっごく憧れてました」
 
「Blogに『運転する浅野さんの横顔は凛々しくて
 とても素敵で、心から抱かれたいと思いました』って
 書いといてね」
 
「それは書きませんけど、車はカッコいいと思いますよ」
 
「車『も』でしょ」
 
浅野さんがBGMをかけた。
Svoyというカナダ在住のロシア系のシンガーソングライターだそうで、
エレクトロニカ寄りのポップスと言う感じだったが、
曲がどれもドライブに合うアルバムだった。
 
「ほら、もうすぐ首都高入るよ。
 夜の首都高とか走った事無いから不安だけど」
 
「わぁ……、すごいです」
 
雨と窓の曇りと夜の暗さで、正直景色は殺風景だったが、
初めての経験と幼き日の夢が叶った興奮から
胸が高鳴った。
 
「どこまで行きたい?」
 
「自分、道分からないので、お任せします」
 
「とりあえず、最初に見つけたサービスエリアで一旦停めるよ。
 ぶっちゃけ俺も今どこに向かってるのかよく分かってないし、
 煙草も吸いたい」
 

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しばらく走って、最初に見つけたサービスエリアに寄った。
 
自販機で2人分のホットコーヒーを買い、外で飲んだ。
相変わらず雨が降っていたので、軒下に佇んで飲む。
浅野さんが吸っては吐く煙草の煙を見つめながら無言で過ごした。
空になったコーヒーの缶を捨て、サービスエリアの暗がりを歩く。
ぽつぽつとした雨が服を湿らせてゆく。
 
寒さに身震いすると、後ろから浅野さんに抱き締められた。
 
「寒いね」
 
「けど、こうされてると暖かいです」
 
くるりと振り向かされ、その胸の中に抱き留められる。
 
「ね、誰の事が一番好きなの?
 亘さん? 犬飼? 嵩兄ちゃんとか言う人?」
 
「――まだ、解りません」
 
浅野さんは少し身を屈めて僕の頬に口付けた。
煙草の臭いがした。
 
「じっくり考えると良いよ」
 
浅野さんはそう言って、抱擁を解いた。
 
「勿論、俺も候補には入れてくれよな」
 
あれだけセクハラを繰り返している割には、
大事な場面では抱き留めてキスぐらいなのだなと、
浅野さんを意外に思った。
初めて浅野さんが良い男に見えた。
 
僕達は新たに暖かい飲み物を買い直し、サービスエリアを後にした。
 

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良く解らない所で首都高を降り、
車通りの少ない寂れた桟橋に車を停め、
1本の傘を2人でさして、雨の中朝を待った。
僕は桟橋の向こうにある海をずっと眺めていたが、
浅野さんはそんな僕の横顔だけを見つめていた。
 
「綺麗な瞳だね」
 
「初めて言われました」
 
「俺は思ってる事をすぐ口にするだけだから
 今こう言ったけど、
 他の皆もそう思ってる筈だよ」
 
「はあ、それはどうも」
 
「俺は本気だよ。
 本当は今すぐもっと抱き締めてキスしたいし、
 セックスもしたいけど、駒ちゃんの全部が
 俺のものになってからじゃないと、嫌かな。
 独り占めしたいから」
 
「そうですか」
 
朝陽が訪れる気配は無かった。
この天候だから当然だが。
空が軽く白んだだけだった。
 
「帰ろっか。寒いだけだし。
 もう一度首都高乗って、来た道戻って、
 駒ちゃんちまで送るよ」
 
「え、うち遠いから、浅野さんちでいいですよ。
 自分は電車で帰ります」
 
「いいからいいから。
 駒ちゃんがどんな街に住んでるかも見ておきたいし。
 でも道解んないから、悪いけど寝ないでね」
 
早朝の首都高を走る。僕の住む街へ向けて。
徐々に外の景色が見えてきて、
改めてまたワクワクした。
 
1時間半程走っただろうか。
徐々に自分の街が近付いてきた。
自分の街に近付けば近付く程に、
僕は憂鬱な気分に苛まれた。
僕は今住んでいる街が嫌いだ。
 
家の近所のコンビニの駐車場で降ろして貰った。
浅野さんは僕の部屋へ来たそうにしていたが、
やんわりとお断りした。
 
別に浅野さんとセックスになだれ込むのが嫌だった訳ではなく、
自分のみすぼらしく惨めな暮らしを見られる事に抵抗があった。
 
「それじゃ、また月曜日にね
 
「はい。今日は本当にありがとうございました。
 服にご飯に、ドライブまで連れてって貰えて
 本当に嬉しかったです」
 
「またデートしてくれる?」
 
「勿論です。本当にありがとうございました。
 浅野さんも眠いと思うので、
 お帰りの際はくれぐれも事故に気をつけてくださいね」
 
それじゃあ、と言って浅野さんは車を出した。
僕は浅野さんの車が見えなくなるまで、
手を振って見送った。
 
部屋に戻ってきた。
どんなに片付けて掃除をしても、どこか不衛生に感じられる、
薄汚くて古い部屋。
敷きっぱなしの布団。流しに置きっぱなしで洗っていない食器。
 
しかし、これが現実。これが本来の僕の居るべき世界。
一気に夢から覚めて行く。
 
パジャマに着替えて、敷きっぱなしの布団に潜り込んだ。
そのまま夕方まで僕が起きる事は無かった。
やれやれ。

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