僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

そうやって手を取って優しくしないでよ

昨日の夜遅く、手首を切ってみた。
丁度昔切った左手首の傷の上をなぞる様に切った。
 
理由は特に無い。
強いて言うなら、台所に包丁があったから。
何となくだったので大して深く切った訳ではなかったが、
予想よりも血が出て驚いた。
 
だが、こうして自分の血を見ていると、何故だか安心する。
自分は生きているのだと感じる。
それと同時に、このまま死んでしまえたらいいなと思った。
とは言え、この程度の出血では死ねない事も解っていた。
 
iPhoneで動画に撮ってみた。
今は勢い良く溢れるこの血も、どうせすぐに固まり、止まってしまう。
それまでの間に記念撮影を、と決め込んだのだ。
 
ふいに悪戯心が湧き、その動画をLineで亘に送りつけてみた。
僕がこんな人間だと知れたら、流石の亘も目を覚まし、
もう二度と僕を愛しているだ等と歯の浮く様な台詞を吐かなくなるだろう。
 
僕は最低な人間だ。
自分の屑っぷりに対する嘲笑で半笑いしながら
動画を送信するボタンを押した。
 
亘が既読を付けたのは5分程経ってからだった。
どんな反応が見られるだろう。
 
本当に僕は自分が最低な人間だと思うが、
正直、最近好意を露骨に示して迫ってくる亘を
疎ましく感じつつあった。
あれだけ優しくして貰っているにも関わらず。
 
それでも。
僕は誰にも愛されなくていい。
愛されるに値しない。
生きている価値も無い。
友達も恋人も家族も、最早何もかも必要ない。
 
そもそも、愛なんて億劫だ。
それに、愛だの恋だのと本気で真に受ければ、
喜んだり悲しんだり、希望を持ったと思えば失望、絶望したりと、
煩わしい事ばかりだ。
そして最後に傷付くのは、他でもない自分自身。
 
亘は既読をつけたきり、何も反応しなかった。
そう。軽蔑するがいい。見放せばいい。
出来れば罵りの言葉も添えて。
 

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出血の勢いも弱くなり、傷がじくじくと痛むだけになって来た頃、
もう寝てしまおうと布団を敷いた。
 
その時、部屋のチャイムが鳴った。
無視して布団に潜り込んだ。
 
再びチャイムが鳴った。
それでも無視をする。
 
真夜中の訪問者は、今度は扉を激しく叩いてきた。
 
誰の訪問かは簡単に予想がついた。
ドアスコープを覗く。
そこには扉を激しく叩くスーツ姿の亘が居た。
 
開錠して、ドアのチェーンを外すなり
亘は部屋へ飛び込んできた。
亘は何も言葉を発さなかったが、非常に慌てた様子ですぐさま僕の左手を取った。
僕の手首の固まりかけた傷口を見て、大きく嘆息した。
そしてへたりと床に座り込んだ。
 
「ああ、良かったぁ……」
 
そう言ったきり、亘は黙りこくってしまった。
僕は何をどうしたものか解らず、自分もその場に座った。
 
「何が良かったんですか」
 
亘は答えない。
その代わりに、亘は僕に抱き付いてきた。
僕は亘のスーツを血で汚すまいと咄嗟に傷口を手で抑えた。
その際、びりっとした刺激が走った。
痛みに顔を歪める。
 
「駒ちゃんさ」
 
亘はぽつりぽつりと話し始めた。
 
「はい」
 
「どうしてこんな事すんの?
 そんなに俺の事嫌い?」
 
「いえ、その逆です」
 
咄嗟に答えて自分ではっとした。
 
「意味わかんねえよ、マジで」
 
「……すみません」
 
口では詫びながら、僕は上の空で、
今しがた自分の口から飛び出した言葉について考えていた。
 
亘は丁寧に僕の手当てをすると、翌日は仕事を休むよう僕に告げた。
こんな状態で仕事をさせるのは心配だと言う。
僕はこれぐらいどうという事はないと反論したのだが、それでも許可は下りなかった。
そして木曜の朝までは僕のそばを離れないと言った。
 
亘はスーツから僕が貸したラフな部屋着に着替えると、
先程まで漂わせていた頑なな態度や雰囲気から一変し、
甘く優しい言葉と態度で僕を甘やかした。
夜中に2人でコンビニへ出かけ、甘いものやアイスを買って、
帰りは夜風で冷えぬよう僕の肩を抱いてくれて、
部屋に戻ってからはそれを食べながら
楽しく喋って過ごした。
まるで先程までの事が何も無かったかのように。
 
アイスを食べて身体が冷えたと言うと、
亘は僕を後ろから抱き締めた。
亘の高い体温が、蕩けそうな程心地よかった。
 
寝る支度をして、電気を消し、2人で1組の布団に入る。
布団に潜るなり、亘は僕に口付けてきた。
1回、2回、3回と、最初の内は短かった口付けが、
回を重ねるごとにその時間が長くなっていき、
最後のあたりには息が苦しくなるほどの長い口付けをしてきた。
 
亘の注いでくれる愛情と優しさが、僕は怖かった。
正確に言えば、いつかそれを失ってしまう日の訪れが怖かった。
僕には何も無いから。僕は醜いから。僕は穢れているから。
きっといつの日にか、亘もそれに気付く事だろう。
だから本当は、優しくなんてして欲しくなかった。
愛なんて僕には要らなかった。
最初から。

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