僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

死にたい程柔らかな温もりと擦れ違った

これは先週金曜の日記だ。
終業後の夜、僕はxxタワーのオープンスペースに来ていた。

 

正直に書こう。僕は亘を待っていた。
入館ゲートが良く見える席で、何もせず只管亘を待った。
ストーカーじみているなと心の中で自嘲したが、
どうしても今夜、亘に会いたかった。
 
数時間が経った頃、亘がゲートに現れた。
僕が駆け寄って行ったら、亘は少し驚いていた。
 
「駒ちゃん! どうしたの」
 
「いえ、その……。
 えっと、お仕事、お疲れ様です」
 
それ以上何と言ったらいいか解らず、僕は口篭ってしまった。
 
「ひょっとして、俺の事待っててくれたの?」
 
僕は答えず、小さく頷いた。
 
「マジか~! 連絡くれれば早目に切り上げて来たのに。
 待たせちゃったね。ごめん」
 
「いや、自分が勝手に待ってただけなので……」
 
何となく気後れしたというか、やはり気恥ずかしかったので
連絡は敢えて入れなかったのだった。
 
仕事の疲労からか多少険しかった亘の表情が徐々にほぐれだし、
優しい笑みを浮かべながら亘は言う。
 
「どうする? うち来る?
 晩飯もまだでしょ」
 
「ええっと……まだです」
 
「じゃ、うちの近所のイタリアンでも行こっか」
 
「ご迷惑じゃないですか、お疲れのところにお家へお邪魔しちゃって」
 
「またまた~。水臭い事言っちゃって。
 大歓迎だよ」
 
こうして亘の住むMJまで向かう事になった。
 

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MJ駅へ向かう電車の中。亘はうきうきしているようだった。
僕は訊いた。
 
「なんか、浮かれてますね」
 
「そりゃーね!
 何てったって、駒ちゃんが俺の事待っててくれたってんだもん。
 俺は嬉しいよ」
 
僕が亘に会いたかった理由。それは実に自分本位だった。
今夜、独りになりたくなかった。
そして、誰か優しくしてくれる人と過ごしたかった。
それが嵩兄ちゃんでもなく、浅野さんでもなく、犬飼さんでもなく、
他ならぬ亘だった理由は、その時はまだ解りかねていた。
 
亘に連れられて行ったMJ駅近くの高めのイタリアンで
しこたま良い酒と料理をご馳走になり、
亘の部屋へ上げてもらった。
部屋へ上げてもらうなり、酒が気持ち良くまわった僕はソファに倒れ込んでしまった。
 
「おーい、駒ちゃん。
 こんな所で寝ちゃダメだよ」
 
亘が僕の肩を揺さぶる。
僕は生返事で答えて、ソファの上で寝返りをうった。
 
「仕方ないな、駒ちゃんは……。
 とりあえず、服だけでも着替えちゃいな」
 
そう言って亘は僕に着替えを持って来てくれたが、
ソファが心地良く、僕は起き上がれなかった。
 
「まったく。
 駒ちゃーん、起きないなら勝手に脱がせちゃうよ」
 
亘は僕の着衣を脱がせにかかった。
未だに起き上がれずに居た僕は、亘に甘えて服を着替えさせてもらうと、
亘に抱っこされ、ベッドへと運んでもらった。
 
むにゃむにゃと僕は亘に伝えた。
 
「亘さん」
 
「なに?」
 
「ありがとうございます」
 
「どういたしまして。
 へへ、かわいいね」
 
「かわいくなんか、ないですよ」
 
亘はスーツのジャケットだけ脱ぎ、僕の隣に横たわると、
急に神妙な面持ちになり、僕の瞳を見据えて言った。
 
「駒ちゃん……。
 好き。
 好きだよ」
 
「それはどうも」
 
「俺は本気だよ。
 ねえ、触っていい?」
 
僕の返事を待たず、亘は僕の頬を撫ぜた。
 
「駒ちゃんが俺の事をどう思ってても、
 他の奴等が何を言ったって、
 俺は駒ちゃんが本当に好きだよ。大切にする」
 
亘は僕を抱き締めた。
優しい言葉とは裏腹に、苦しくなるほど、力強く。
 
亘の高い体温を全身で感じ、今夜、亘に会いたかった理由が解った。
僕は、亘の腕の中でなら、生きて行ける気がした。

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