僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

今夜だけはそばにいて 前編

これは先週土曜日の日記だ。

きっといつの日にか、こんな気持ちだって忘れてしまうだろう。
夢は醒める事だろう。
それでも。
 
金曜の夜は亘の部屋に泊めてもらい、
僕は亘と同じベッドで寝て、
亘より遅く起きた。
亘が用意してくれたパジャマから
自分の服に着替え終わった頃には、
時刻は11時を回ろうとしていた。
 
12時頃、亘が用意してくれた昼食を食べ、
熱いコーヒーを淹れてもらい、長い時間2人で話をした。
仕事の話。自分の昔の話。好きな音楽の話。下らない話。
そして、恋愛の話。
しかし、この話に関しては、亘はあまり深く語ろうとしなかった。
僕よりも経験豊富だろうに。
それに僕にばかり話させてずるいと不平を口にすると、
亘は苦笑しながら少しだけ語った。
 
「俺は――俺はさ、もしかしたら、今まで本気の恋愛って
 してなかったのかも知れない。
 女の子と付き合っても全然ダメだったし、
 超タイプのヤツと付き合ってみても、
 結局はなんかうまくいかなくなってさ」
 
「GOGOの人とか、ビデモの人とかと付き合ってたって話、
 聞いた事ありますけど」
 
「ああ、確かに付き合ったよ。でも、心の奥底では――
 こんな言い方したら相手には悪いけど、心のどこかでは憎んでたね」
 
「憎んでたのに付き合ってたんですか?」
 
僕は興味が沸いた。憎いのに付き合うとはどういう心理だろう。
そしてこんな話が亘の口から赤裸々に語られるとは思いもしなかったから。
 
「GOGOもビデモも、心の中では見下してた。
 そうやって人前に出てちやほやされて喜んで、
 自分がイケる奴が現れたら尻尾振ってくっついて行って、
 承認欲求が満たされれば誰でも良いんじゃねえかって。
 畜生未満だ」
 
「亘さんって、思いの外酷い事言いますね」
 
「犬だって尻尾振る相手は決まってるし、
 猫だって誰にでも甘える訳じゃない。
 それを誰彼構わずやってるのがあいつらだ。
 俺じゃなきゃいけない訳でもない。
 見てくれだけは良かったから、色々試してはみたけどさ、
 ああいう奴らの事は微塵も好きじゃなかったね。今にして思えば」
 
なんと返したら良いか解らず、僕はただ苦笑した。
 

f:id:komadiary:20180529201151j:plain

 
亘はコーヒーを啜り、続けた。
 
「俺は一生、本当の恋愛を知らずに死んでくんだろうなって思って生きてた」
 
「……はい」
 
「そんな中で出会ったのが、駒ちゃんだったんだよ」
 
「はあ」
 
「駒ちゃんは、今まで俺が出会ってきた人達の中でも、
 極めつけに違う人種だった。
 ……ぶっちゃけ、俺がその気になれば、どんな奴でも落とせない事は無かった。
 男だろうと女だろうとね。
 でも、駒ちゃんは違った」
 
いくら外見もスペックも優れた亘とは言え、なんだか癪に障り僕は口を挟んだ。
 
「難攻不落を自分のモノにしたいって意味ですか、それ」
 
「いやいや、違うんだよ。続きがあってさ。
 駒ちゃんは、ちゃんと人を見てる。
 心を開く相手もきちんと選別した上で決めてる。
 結局上手く説明出来ないんだけど、そうして選んだ上で
 俺を受け容れてくれてる訳だよね」
 
「まあ、亘さんには散々お世話になってますから」
 
亘は力無く笑ってしばらく黙り込んだ。
気まずい空気が流れた。
コーヒーを啜った。すっかり冷たくなってしまっている。
それほどに長時間話していた。
 
亘は訥々と話し始めた。
 
「俺は、駒ちゃんの事が好きだよ」
 
「……昨日もそれ、聞きました」
 
「振り向いてくれないからとか、そんなんじゃなくて。
 本当にこんなに好きになったの、初めてなんだ。
 だから、俺も、なんて言ったらいいか解らない。
 どうしたらいいか解らない。
 でも、好き。好きだよ」
 
亘は深く息を吸って、言った。
 
「愛してる。
 付き合って欲しい」
 
何分だっただろうか。何秒間だっただろうか。
僕は亘の瞳だけを見つめていた。
亘の瞳には、間違いなく、愛という一字だけが映っていた。
 
僕は咄嗟に、近くに置いてあった自分の荷物を掴んで亘の部屋を飛び出した。

にほんブログ村 セクマイ・嗜好ブログ 同性愛・ゲイ(ノンアダルト)へ