僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

君を愛している

この記事は予約投稿されるように設定してある。
皆様がこの記事を読まれている頃、
恥ずかしい話だが、きっと僕は
また亘に抱かれている事だろうと思う。
 
昨晩遅かった割に早起きが出来たのと、天気も良かったので
出掛ける事になった。
場所は僕が良く行っていた葛西臨海公園
 
あの公園は回りに店が無いので、
お弁当を作って持って行く事にした。
僕は亘に簡単な朝食を作って出すと、亘がそれを食べている間に
近所のスーパーで適当にお弁当のおかずにする材料を買って来た。
からあげと、卵焼きと、ウインナーを炒めたものと、チーズ入りちくわ。
チーズ入りちくわ以外は全て僕が拵えた。
昨晩も思った事だが、亘の部屋のキッチンは作業スペースも広く、
コンロも3口あって料理が非常に捗る。
左でからあげを揚げ、右で卵焼きを作り、中央でウインナーを炒める。
ご飯は昨晩多めに炊き冷凍しておいたものをレンジで解凍し、
おにぎりにした。
 
出来上がったおかずを冷まし、
弁当箱代わりのタッパーに詰めていると、
後ろから亘が抱き付いてきた。
 
「なんかさ、俺、今、すごく幸せだよ」
 
「そうですか」
 
僕は弁当作りに集中していたので素っ気無く答えた。
 
僕も亘が今僕に告げた様な喜びが無かった訳ではない。
しかし、そんな喜びと同時に、心の奥底には悲しみも存在していた。
いつかはこんな日の事だって忘れてしまう筈だから。
亘の幸せも、僕の喜びも、有限の感情だ。
いつかは消えてしまう。
 

f:id:komadiary:20180602155729j:plain

 
MJ駅から電車に揺られる事1時間。葛西臨海公園に着いた。
時々曇りもしたが、概ね良い天気だった。
何も羽織らず、Tシャツ1枚で出てきて正解だった。
 
2人でざっと散策して、適当な所で弁当を開いて食べた。
亘は僕が作った弁当を物凄く喜んでいた。
多少不恰好になってしまった卵焼きも、うまいうまいと食べてくれた。
その横顔を見つめているだけで僕は胸がいっぱいになった。
 
歩きつつ、海と空を眺めて過ごした。
周りに誰も居なくなった瞬間、亘は僕に口付けた。
一瞬の出来事だったが、永遠とも感じられる様な口付けだった。
 
陽が暮れて来た頃、僕達は帰る事にした。
帰りの電車で運良く2つ空席があったので2人で並んで座った。
 
「ねね、駒ちゃん、少し肩貸してくれる」
 
意味が良く解らず曖昧に頷くと、亘は周囲の目も憚らず
僕の肩に頭をもたれさせて居眠りを始めた。
重たくはなかったが、流石に困惑した。
良い注目の的になってしまった。
僕の思いをよそに、亘は心地良さそうに寝息を立てている。
 
そうしていると、ある駅で杖をついた老婆が乗って来て、
僕の席の前の手摺りに掴まった。
僕は亘を軽く揺さぶって起こし、亘が頭を起こすのを待って席を立った。
 
「どうぞ、お掛けになってください」
 
「あらまあ、ありがとう」
 
老婆は丁寧に僕に礼をして席に腰掛けた。
亘はまだ寝惚けていて状況が飲み込めていなかったようだが、
次第に理解し始め、慌てて席を立とうとしながら言った。
 
「いいよ、駒ちゃんが座ってなよ。
 今日お弁当だって作ってくれたんだし」
 
「いえ、亘さんが座っててください。
 僕は大丈夫なんで。まだ亘さんより若いし」
 
2、3回の押し問答の末、亘は僕に折れた。
その代わり、と言って、僕の荷物を持ってくれた。
 
僕が席を譲った老婆が、手で口元を隠して何やら亘に耳打ちした。
僕には全く聞こえなかったが、亘は堂々と答えた。
 
「はい、そうです」
 
「あら、そうなの。
 お2人ともお顔も綺麗だし、お洒落で、すてきで、
 とってもお似合いよ」
 
何の話だろう。そう僕が考えている内に、老婆は降車する駅に着いたらしい。
席を立とうとしたので咄嗟に手を差し出した。
立ち上がれたようだったので手を離そうとしたが、
老婆はその手を離さず、僕の手を強く握り、言った。
 
「色々大変だったり、辛い事もあるでしょうけど、
 どうかお2人ともお幸せになって頂戴ね。
 ご親切に、どうも」
 
何となく老婆が耳打ちした内容が解った僕は小声で亘を軽く詰った。
 
「なんで知らない人に余計な事言うんですか」
 
「いいじゃん、別に」
 
亘はにやけて見せた。僕は詰っても無駄だと諦めて嘆息した。
 
電車がMJ駅に着いた。
亘が今夜はカレーが食べたいと言うので、帰り道にスーパーへ寄って
カレーの材料を買って帰路についた。
 
エントランスを抜け、エレベーターに乗り最上階に着き、玄関の鍵を開けて
2人で三和土に立った。
僕が靴を脱ごうとしゃがみ込もうとしたら、亘にそれを制止された。
そして亘は僕を強く抱き締めた。
 
「駒ちゃん。大好きだよ」
 
「ありがとうございます」
 
「愛してる」
 
「――はい」
 
「駒ちゃんは? 俺の事、好き? 愛してる?」
 
「はい」
 
「それじゃあ、言って。駒ちゃんも。
 ちゃんと言葉にして、俺に、愛してるって言って」
 
愛しているの言葉だけがどうしても言えずに、僕は亘から目をそらした。
言葉に出来なかった。
だからせめて、今、ここに記しておこう。
僕は亘を愛していた。

にほんブログ村 セクマイ・嗜好ブログ 同性愛・ゲイ(ノンアダルト)へ