僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

微笑みの裏

いい加減亘とのエピソードばかりで、
書いていて飽きて来たので、
そろそろ違う話も書いてみようと思う。

 

3月末でアルバイトの女子が1人辞めて欠員が出来たため、
先月から人員の補完で新しい人が入って来た。
その人が中々面白いので記事に書かせて貰おうと思う。
 
ここでは彼女の名前を櫻井さんと呼ぶ事にする。
浅野さんに気に入られて採用された女性で、僕の1つだか2つ歳下の人だ。
仕事も出来るし、決して器量も悪くない。
ただ1つ、この職場ではかなり浮いてしまう、特殊な点がある。
ものすごくギャルなのだ。
 
露出こそ高く無いが、ファッションからメイクに至るまで完璧なギャルだ。
そのせいで、浅野さんとは仲が良いようだが、他の社員やアルバイトの女子達とは
かなりの隔たりが出来てしまっている。
大昔の記事で書いたが、基本的にこの職場のアルバイトの女子達は排他的なので、
異質な存在とは一切関わらない。
そのせいで彼女は挨拶もろくに返して貰えず、見ていて気の毒になる。
 
僕は彼女と時々話す機会がある。
彼女がExcelで解らない点があり浅野さんを頼った事があったのだが、
浅野さんからPC関連の質問は基本的に僕に訊くよう、彼女に伝えたのだ。
 
「駒さん、少々お聞きしたいのですが、
 HLOOKUP関数とはどう使うものなんですか?
 HLOOKUP関数を使ったExcelファイルを修整しないといけないんですが、
 良く解らなくて。VLOOKUP関数なら解るんですが」
 
最初はどんな事をどんな風に訊かれるのだろうとビビっていたのだが、
話し口調も常識的だし、質問もそんなに的外れなものではなかったので、
普通に対応した。
 
「VLOOKUPは列、つまり縦方向に検索するんですよ。
 それに対してHLOOKUPは横方向、行を検索するんですよ。
 まあ、滅多に使う関数じゃないんで、解りづらくて当然なんで、
 それでも修整出来なかったらまた訊きにいらしてください」
 
「それなら解ります。解りやすいご説明、ありがとうございます」
 
浅野さんが連れて来た人だし、めちゃくちゃギャルだし、
どんなぶっ飛んだ質問が来るのかと怯えていたが、
Excelも理解していて、ちゃんとしたお礼も言える良い子だなと思い
好感度が上がった。
むしろ、他のアルバイトの女子よりよっぽどまともなのではなかろうか。
 
他にもWordやPowerPoint等の質問を受けたが、
どれもそう困った質問ではなく、
誰でも解らないような問題ばかりであった。
 
やはり彼女も過去の僕と同じく悩んでいたようで、
ついに今日、相談というか、お誘いを受けた。
 
「駒さん、宜しかったらなんですが、
 今日どこかランチご一緒していただけませんか。
 ……正直、オフィスだと食べ辛くて」
 
彼女は普段、浅野さんと連れ立って昼食をとりに行っているが、
今日は浅野さんが外出の為居ない。
恐らく、過去にオフィスで食事をとっていて嫌な目に遭ったのだろう。
しかしこの辺りは、若い女性が1人で食べに行くにはハードルの高い店が多い。
 
「ああ、お気持ち解ります。
 定食屋さんで宜しければ安いところ知ってるんで、
 そこで如何でしょう」
 
「ありがとうございます。
 それでは、そこでお願いします」
 
僕は亘に事情を説明し、昼食を断る旨のLINEを送った。
 

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昼食の時間になった。
僕は櫻井さんと連れ立って、良く行っている定食屋へ向かった。
 
席について注文をして、しばらくは当たり障りの無い会話をして過ごした。
少しして、櫻井さんは辺りを窺うように見渡し、
声を潜めて言った。
 
「あの、お気に障られたら申し訳無いんですけど、
 駒さんって、男性とお付き合いされてるって本当ですか」
 
「……浅野さんが仰ってたんですか?」
 
「はい、ここだけの話って言って。
 浅野さん最近落ち込んでて、どうされたのかなって思って訊いたら」
 
浅野さんめ。これは完全なるアウティングという奴ではないか。
とは言え浅野さんが読んでいる事を全く考慮せず、
赤裸々に記事に綴っていた僕にも非がある。
 
「ごめんなさい、私、突っ込んだ話聞いてしまって」
 
「いえ、お気になさらないでください。
 その通りなんで」
 
「なんか、浅野さん、駒さんの事すごい好きだったみたいですよ」
 
「そ、そうですか」
 
気まずい空気の中、料理が運ばれてきた。
 
こんな雰囲気の中で食事をとるのは嫌だと思い、
僕は明るく取り繕って言った。
どうせもう僕がゲイだと知られているのだし、
櫻井さんなら職場でふれて回られる心配も無いだろうと踏んだ。
 
「ここにもたまにいらっしゃる、取引先の方ですよ。
 元々別の場所――っていうか、新宿2丁目で知り合った方で、
 取引先の方だったのは偶然だったんですが……。
 あの、●●社の方です」
 
「●●社って、主要取引先じゃないですか」
 
「ええ、まあ、そうですね」
 
意を決したように、櫻井さんは言った。
 
「私、駒さんの彼氏さんにお会いしてみたいです」
 
「え……」
 
「すみません、図々しくて」
 
「いや、図々しくは無いですけど」
 
僕は悩んだ。どういう意図があるのだろう。
そもそも余り深く素性を知らない櫻井さんに、
自分の彼氏を紹介していいものだろうか。
 
彼氏。ふと気が付いた。
亘とはもうただの知人や友人等ではなく、
恋人同士という間柄になったのだ。
僕も自分の知らない所で、亘から彼氏と呼ばれているのだ。
何故かそう思っただけで顔が熱くなるのを感じた。
 
とりあえずこの場を取り成そうと思って言った。
 
「……向こうの意思も訊いてみないと解らないので、
 ちょっと返事はお待ちいただいて良いですか」
 
「あ、はい。勿論です」
 
とりあえずは亘にも相談してみる事にして、
都合が悪ければ亘が会いたくないと言っている事を理由にして
体よく断ってしまえば良いと思った。
 
「余り期待しないでいてくださいね」
 
「はい、解りました」
 
普段から余り表情を変えてみせない櫻井さんが、微笑んで答えた。
その笑みに、何か裏が無ければ良いのだが。

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