僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

真夜中の真実

完全に日付がずれてしまっているが、
これは土曜日の夜の話だ。

 

亘のリクエストに応えて、夕飯にグラタンを作った。
ベシャメルソースから作り上げたので
多少の手間と時間が掛かったが、
そんな苦労も吹き飛ぶ程の喜びっぷりと食べっぷりが見られたので、
僕は満足だった。
 
食後、昨日は行かなかったので、今夜こそは
2丁目へ繰り出そうと言う話になった。
正直僕は気乗りしなかったので、
1人で行って来てはどうかと提案したのだが、
2人でデートと言う形で行かなければ意味が無いと言われ、
渋々ついて行く事となった。
……また暴力を受けなければ良いのだが。
 
世界堂が角にある交差点を渡る辺りから
亘は僕の手を握って来た。
恥ずかしかったが、誰かに見られて困ると言う事も無いので
その手を握り返した。
それに気を良くした亘が言う。
 
「ねえ、今キスしちゃダメ?」
 
「我慢してください。
 盛りのついたガキじゃあるまいし」
 
「いいじゃん、ケチだな~」
 
ここでは場所を伏せて言うが、あるショットバーへ入った。
クラブでは無いものの、やかましい店だ。
僕はビールを頼もうとしたのだが、亘が勝手に注文をした。
 
テキーラ2杯ください」
 
亘が支払いをすると、
すぐにちゃちいショットグラスの上に
レモンが乗ったテキーラが2杯出て来た。
 
亘はショットグラスのテキーラを一気に呷り、
レモンを齧った。
もう1杯のショットグラスを僕は受け取ろうとしたが、
それも亘が一気に呷った。
そして亘がいきなり口付けて来た。
驚いたと同時に口の中に焼けるような液体が流れ込んで来た。
口移しでテキーラを飲まされたのだ。
亘の唾液混じりのテキーラが僕の喉を焼く。
頭に来て僕は亘の手からレモンを引ったくり、齧った。
 
「すいません、またテキーラを――」
 
「いい加減にしてください」
 
「え、なんで」
 
「みっともないし、きったないです」
 
「汚いって!」
 
亘は酷くショックを受けた様子だった。
 
「俺、ちゃんと歯磨いてるもん。
 リステリンもしてるし、フロスもやってるし、汚くないもん」
 
「そういう問題じゃありません」
 
思わず痴話喧嘩を繰り広げそうになったが、
後ろに人も並んでいたので、とりあえずビールを2杯注文して
適当に空いていた席に座った。
 
僕の言葉がショックだったのか、亘は落ち込んでしまった。
しょげているさまが可愛らしかったが、
可哀想になったので僕は亘の気持ちに応えてやろうと思い、
亘に顔を上げさせて口付けた。
 
「言い過ぎました」
 
「ううん、俺の方こそ、ごめん」
 
亘は再びその唇で僕の口を塞いだ。
幾度と無く繰り返して、
流れている音楽が別の曲になった辺りで
ようやく僕を解放した。
 
しかし、今度は僕の手を掴み、
自分の太ももの辺りを僕に擦らせた。
亘に掴まれた僕の手は亘の太ももを幾度かなぞり、
徐々に徐々に上の方へと移動させられ、
最終的には男の部分の辺りまで移動させられた。
きんきんに硬くなった亘の自身に手を当てさせられ、
流石に僕は亘の手を振り解いた。
 
「やっぱり、亘さんは馬鹿ですよ」
 
「うん、馬鹿でいいよ」
 
そう言って亘は笑った。
 

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丁度ビールを飲み干したとき、
所謂(もう死語かも知れないが)『シャイニーゲイ』風情の
グループが店に入って来て、亘を視認すると
信じられないくらい馬鹿でかい声で亘を呼んだ。
 
「亘じゃん! 久しぶり~。
 『独りで』何やってんの?」
 
どうやら彼らには亘の隣に座っている僕が眼中に無いらしい。
この手の輩を僕が嫌っている理由には
こういうデリカシーの無さがある。
 
「彼氏とデートだよ」
 
「へえ」
 
グループ一同は僕を一瞥すると、僕の存在等無かったかのように、
適当な理由をつけて無理矢理亘を引っ張っていった。
 
独りになってしまった。
こう言う事になるのが嫌だから2丁目に来たくなかったのだが。
仕方なしに僕はネットでも見るかと思い、
ツイッターを開いたら、おかしくなってしまっていた。
 
というか、正直にここで述べておくと、
昼間、興味を持った人を片っ端からフォローしまくった結果、
アカウントを凍結されてしまったようだった。
色々やってなんとか凍結を解除し、普通に使える様に戻した。
 
ツイッターを見て回ったり、自分のBlogを書いたりしていたら
亘が戻って来た。
 
「駒ちゃんさあ、俺とインターネット、どっちが大事なの?」
 
自分から僕の元を離れていった癖に、
一体どの口が言うのだろうか。
僕はまた頭に来て嫌味で返してやった。
 
「インターネットです。
 ネットは僕を独りにしないし、裏切ったりしないですからね。
 亘さんみたいなチャラチャラした人と違って。
 早くお友達とどこへでも遊びに行けばいいんじゃないですか
 
「あんなの友達じゃねえよ。見りゃ解るだろ」
 
「すいませんね、見る目が無くて」
 
本格的な喧嘩になってきた。だが僕は一歩も引く気は無い。
しばらくこんなやり取りを繰り返していたが、
結局は亘が折れる形で収束した。
 
「一緒に居るって約束破ったの俺だもんね。
 ごめん」
 
内心僕はほっとした。僕は亘のこういう所が好きだ。
亘が謝ってくれたので、僕も素直に謝って仲直りする事にした。
 
「僕も言い過ぎました。すみません」
 
それでもデリカシーの無い奴らがやって来て、
亘をイベントだかに行かないかと誘っていたが、
亘はきっちり断った。
 
「あのさあ、いい加減見て解んないかな。
 俺、彼氏とデートで来てるんだよね。
 俺達、『お友達』なんでしょ?
 そっとしておくとか、そう言う気持ちは持ってくれないの?」
 
奴らは不平不満を口にし、未練たらたらの様相で去って行った。
独りじゃ何も出来ないくせして、集団になると手が負えない。
こういう奴らが僕は本当に嫌いだった。
唾の1つも引っかけてやればよかった。
 

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やっと2人になれた。そう思いきや、今度は店のマスターが出て来た。
 
「あら、亘ちゃん、いらっしゃ~い。
 久しぶり~。元気? 今日はどうしたの?」
 
「おお、マスター、お疲れ~。
 今日はね、デートで来てるんだ。紹介するよ。
 彼氏の駒ちゃんです」
 
「どうも――」
 
「あ、ちょっと待っててね」
 
僕の挨拶すら聞きもせず遮ったマスターは、
カウンターの元へ行き、
ビールを1杯だけ持って戻って来た。
 
「はい、これ。亘ちゃんにサービス」
 
亘の目に一瞬、静かな怒りの炎が宿ったのを僕は見逃さなかった。
 
「サービスしてくれんのはありがたいけどさ。
 俺、デートで来てるって言ったよね。
 俺のツレに恥かかす気?」
 
「そんなつもりじゃ……」
 
「いい度胸してんじゃん」
 
亘は思い切りテーブルを蹴り飛ばした。
かなり重い筈のテーブルが勢い良く引っくり返った。
床にビールの池が出来た。
 
マスターは戦いていたが、亘は憤然として席から立ち上がり、
どこまでもやるつもりだと言う雰囲気を醸し出していた。
僕は亘のシャツの裾を引っ張り、小さく言った。
 
「やめましょうよ、亘さん」
 
亘は1万円札をビールの池に投げ込んだ。
 
「これ、ビール代に手切れ金。
 もう来ないから。今まで親切にどうも」
 
行くぞ、と亘は僕の手を強く引いた。
僕は亘に手を引かれるまま店を後にした。
 
亘は店の外へ出るなり、大きく鼻で息をついた。
 
「まったく、どいつもこいつも」
 
「まったくじゃないですよ、大人げない。
 お金も勿体無いです」
 
「俺の金をどう使おうが俺の勝手だ」
 
「だからって言ってあんな事するぐらいだったら、
 よっぽど僕に恵んでくださいよ」
 
「こんな惨めな想いすんのは初めてだよ」
 
「僕は2丁目来ると、大体いつもこんな感じですよ」
 
「それなら、こんな街無くなっちまった方がよっぽどいい。
 何がゲイタウンだ。何が多様性だ。糞喰らえだ。
 どの店も潰れちまえ」
 
亘は憤慨していたが、僕はこの程度の扱いを受けるのなんて
慣れっこだった。
 
「静かで、もっと人の好いマスターが居る店知ってますが……」
 
「ううん。
 もう、興が醒めた。2丁目は当分いいや。
 おうち帰って飲み直そうか。
 全部俺が払うから、タクって帰ろう。
 またおつまみ作ってくれる?」
 
「まあ、亘さんのお願いなら、なんでも聞きますよ」
 
「……今、なんでも、って言った?」
 
「例外はあります」
 
仲通りの辺りでのろのろと客探しをしていたタクシーを捕まえ、
MJにある亘のマンションの方へ向かってもらうよう頼んだ。
 
「僕、もしかしたら、タクシー乗るのって
 人生で2、3回目ぐらいだと思います」
 
「そうなの? じゃ、これから沢山乗せてあげるね」
 
「こういうのはたまに乗るからいいんですよ。
 慣れちゃったら、何も感じなく――」
 
話している途中の僕の口を亘の唇が塞いだ。
羞恥が沸いて横目で運転手の方を見たが、
流石2丁目辺りを流しているだけあって、
全くこちらの事など意に介さず運転に集中していた。
 
亘が唇を離した。
僕は窓の外に目をやった。
 
流れて行く景色。
すれ違う車のヘッドライト。
綺麗だった。
 
亘に激しい怒りをもたらした様な仕打ちも、
僕にはなんて事無かった。
亘が居てくれるから。
 
流れる景色を眺めながら、
帰ったら亘にどんなつまみを作ってやろうかと思索した。

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