僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

痴話喧嘩

これは昨日の夜の話だ。
 
いきなり結論から言ってしまうと、
タイトル通りの話である。

 

実父が去った喫茶店でしばらく時間を潰した僕は、
電車で最寄の駅まで行き、
嵩兄ちゃんの整骨院へ向かった。
時刻は夕方だった。
 
嵩兄ちゃんの整骨院は盛況で、
かなり混み合っていた。
しばらく待たされたが、施術は嵩兄ちゃんが担当してくれた。
やはり院長なだけあって、嵩兄ちゃんが一番上手なので
非常にありがたい。
 
「なあ、駒。
 今夜あいてるか?」
 
僕は一瞬躊躇った。亘の夕食の準備があったから。
しかし、たまにはお休みを頂いてもいいだろう。
 
「うん、大丈夫だよ。
 終電があるけど」
 
「終電? どういう事だ?」
 
「今、『友達』の家に居候させてもらってるの。
 ほら、うち、駅から遠いから、歩くの辛くって……。
 だから、駅近の『友達』の家でお世話になってるんだ」
 
「そうか。まあいいけどよ。
 迷惑かけんなよ。
 それで、俺、終わるの21時頃になるけど、大丈夫か」
 
「うん、大丈夫。
 どこかで時間潰して待つよ」
 
「おう、終わったら連絡する。
 奢ってやるから、飲もうぜ」
 
今夜は亘には自分で夕食を済ませてもらおうと思った。
会計を終えて嵩兄ちゃんの整骨院を後にして、
亘にLINEで連絡を取った。
 
『今夜お世話になってる人と飲む事になったんで、
 夕飯はご自身で済ませてもらっていいですか?』
 
『うん、いいよ。けど、ちゃんと帰ってきてね。
 それからあと、怪我してるんだし、
 あんまり飲み過ぎないように』
 
『はい、解りました』
 

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21時まで適当に時間を潰して、
嵩兄ちゃんといつも行く居酒屋で落ち合った。
 
嵩兄ちゃんはいつもの様に山ほど料理を注文し、
大量の酒と共にたらふく平らげていった。
嵩兄ちゃんは酒豪の上に大食いだ。
 
「嵩兄ちゃん、いい加減太るよ」
 
「何度も言うけど、太らねぇって。鍛えてるしな」
 
他愛の無い会話を繰り返している内に、
終電の時間が近付いた。
嵩兄ちゃんと共に店を後にし、駅へと向かう。
 
「いつもご馳走になっちゃって、ごめんね」
 
「何水臭い事言ってんだよ。
 大体、俺の方が飲んで食うんだから、
 なんにも気にすんなって」
 
「ありがとうね、いつも」
 
改札の前に辿り着いた。
嵩兄ちゃんが歩みを止めた。
 
「なあ、駒」
 
呼び掛けに振り向いた僕を、
嵩兄ちゃんはその胸の内に抱き留めた。
 
「ちょ、ちょっと」
 
「どこにも行くな」
 
駅を行き交う人々が好奇の視線を僕達にぶつける。
しかし、嵩兄ちゃんはお構いなしだ。
僕は慌てて嵩兄ちゃんを引き剥がそうとしたが、
力も体格も圧倒的に僕より勝っている嵩兄ちゃんに
非力な上に手負いの僕が敵う筈も無く、
僕は嵩兄ちゃんのされるがままだった。
 
「やめてよ、飲み過ぎだよ」
 
「やめねえよ」
 
「人が見てるってば」
 
「知った事か」
 
嵩兄ちゃんが僕の顎を片手で掴み、僕の顔を上げさせた。
まさか、と思った瞬間、嵩兄ちゃんは僕に口付けた。
 
「嫌か?」
 
嵩兄ちゃんは切なそうに僕に訊いた。
 
「終電だから、放して」
 
嵩兄ちゃんは諦めた様子で僕を解放した。
 
僕は放されるなり、嵩兄ちゃんに背を向け
改札へ急いだ。
 

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終電でMJ駅まで辿り着き、亘の部屋に着いた。
扉を開けると、なんと亘が仁王立ちで僕を待ち伏せていた。
 
「た、ただいま」
 
「浮気して来ただろ」
 
「……何の話ですか」
 
「他の男に抱かれただろ、って訊いてんだよ」
 
ぎくりとした。亘は頭が切れるだけでなく、変に勘が鋭い。
 
確かに抱かれたのは事実だ。
しかし、亘の言う『抱かれた』と言う意味ではないし、
不本意の事だった。
 
「他の男の匂いがするんだよ!」
 
亘はいきなり怒鳴った。
怒りからか顔が真っ赤になっている。
萎縮した僕は、ありのままを伝える事にした。
 
「すみません。抱かれた、っていうか、ハグされました」
 
「絶対それだけじゃねえだろ」
 
「……キス、されました」
 
「やっぱり浮気して来たんじゃねえかよ!」
 
理不尽だ。どうして僕が怒られなければならないのか。
嵩兄ちゃんが勝手にして来た事なのに。
それも、僕は拒んだというのに。
僕は泣きたくなったが、ここで泣いたら
浮気を認めたも同然だと思い、ぐっと堪え、伝えた。
 
「僕はやめてください、って抵抗したんですが、
 力づくで無理矢理されました。
 証拠を出せって言うのなら、今ここで相手に電話をかけて
 証言して貰う事も出来ます」
 
「随分と自信があるもんだな」
 
亘は冷笑したが、僕は毅然とした態度を崩さなかった。
 
僕の態度を見て折れたのか諦めたのか、
亘はやれやれ、と言った様子で部屋へ戻っていった。
 
寝る支度を終え、僕はベッドへ入った。
先にベッドで横になっていた亘は僕に背を向け、
寝たふりを決め込んだ。
 
僕はそんな亘の背にくっ付いて、懇願した。
 
「亘さん。お願いです。
 僕を信じて、許してください。僕だって不本意だったんです。
 僕、亘さん以外の人と、そんな――」
 
言っている内に悲しくなって、堪えていた涙が自然と溢れ出した。
泣き出した僕の気配を察知してか、亘は寝たふりをやめて振り返った。
 
「もう、解ったよ。そこまで言うなら信じるよ。
 怒って悪かったな。ちょっと俺、焼きもち焼いてた。
 ほら、泣かないで。な、これで仲直り」
 
そう言って亘は僕を抱き締め、頬に口付けた。
 
今日は1日中本当に酷い目に遭った。
僕は亘の腕の中でようやく安堵し、眠りへと落ちていった。

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