僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

薄紫が色を差す

これは土曜日の話だ。
 
前日とは打って変わり、
朝、亘は僕にやたら優しかった。

 

僕が起き出す頃に合わせて朝食のパンケーキと、
挽き立ての豆で淹れたコーヒーを用意してくれていた。
 
甘いメイプルシロップをパンケーキにたっぷり掛けて頂く。
 
「おいしい?」
 
「おいしいです」
 
「そっか、良かった」
 
朝食を終え、コーヒーを飲みながら
ソファで過ごした。
今日は冷えた。
寒いと言うと亘はスウェットのパーカーを貸してくれ、
それでもまだ肌寒いと言うと
僕を抱き留めてくれた。
亘の高い体温が心地良かった。
何かにつけて亘が僕の耳元で囁く。
その度に僕の身体の芯に痺れが走るのを感じた。
 
コーヒーを飲み終えると、亘は今度はミルクティーを淹れてくれた。
甘く柔らかな味が口の中に広がる。
 
甘いミルクティーを味わっていると、亘が提案して来た。
 
「あんまり天気良くないけど、雨は降らなさそうだし、
 怪我が大丈夫そうなら、デート行きたいな」
 
「怪我なんて全然大丈夫ですよ。出掛けましょう」
 
亘は僕の足を考慮してタクシーで行こうとしていたが、
そこまで重傷を負っている訳ではないので、
僕は電車で行く事を提案した。
 

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出向いたのは、飛鳥山公園と言う、JR京浜東北線沿いの
王子駅の近くにある大きな公園だった。
春は桜、この時期は紫陽花が楽しめると言うのが売りらしい。
 
確かに見事な紫陽花だった。見物客も多い。
 
僕は本当に寒がりなので、かなり厚着をして来たのだが、
それでも少し寒かった。
その一方で亘はシャツに薄手のジャケットと言う出で立ちだ。
 
寒さに震えていたが、亘に付き合って綺麗な紫陽花を眺めて過ごした。
紫陽花を写真に収めようかとも思ったが、
なんだか無粋な気がしてしなかった。
今この瞬間を味わっていたかったから。
 
亘が手招きをして、紫陽花の隙間にあった階段を上りだした。
足を引き摺りながら僕もその後を追う。
 
雑木林の様な通路に出た。
てっきりもっと紫陽花が良く見える所へ連れて行ってくれるものだと
思っていた僕が不思議に感じていると、
人通りも無く、木々に覆われて外から人に見られる心配も無いのを
良い事に、亘は僕を抱き締めた。
 
「寒そうにしてたからさ。
 こうしてれば、暖かいでしょ」
 
「誰か来たら、困ります」
 
「誰も来ないよ」
 
「でも――」
 
「誰が来ても、俺は構わないよ」
 
亘の腕に抱かれて。その胸の内に収められて。
強い力で抱かれて息苦しかったが、
亘の胸の中は本当に暖かかった。
こんな毎日が、こんな瞬間が、
永遠に続けばいいと思った。
永遠なんて存在しない筈なのに。

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