僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

破れる恋もまた在る

長らくこのBlogには登場していなかったが、
久々に犬飼さんとのエピソードを書こうと思う。

 

Blogに登場していなかっただけで、
犬飼さんとの関係が無くなったり、
悪化したりしていた訳ではない。
普通に挨拶も交わしていたし、
毎日会話も良くしていた。
 
しかし、やはり出世を目指している様子の彼は、
僕よりも直属の上司らと昼食や飲みに行く機会が多く、
中々僕とはタイミングが合わずにいた。
 
そんな風に色んな上司や先輩社員達から可愛がられている
犬飼さんだが、唯一浅野さんからは余り好かれていなかった。
……浅野さんが彼の事を陰で「筋肉ダルマ」と
呼んでいる事を、僕は知っている。
 
今日、久しぶりに犬飼さんから
昼食に誘われた。
本当は亘との約束があったが、
今は一緒に住んでいる訳だし、
昼食ぐらいは他の人と食べてもいいかと思い
承諾した。
亘にはLINEで断りの連絡を入れておいた。
 
僕は犬飼さんと連れ立っていつもの定食屋に行った。
適当に注文をし、話し始める。
 
「駒さんとメシ来んのすげー久々で、嬉しいっす!」
 
「そうですか。それは何よりで」
 
「怪我の具合は大丈夫っすか?」
 
「歩くと痛みますが、安静にしてる分には平気ですし、
 この調子ならあと2週間ぐらいで治るみたいです」
 
「そうっすか。それなら安心っす。
 なんか見てると痛々しくって。
 けど、自分には何にも出来ないのが歯痒くって」
 
「いや、まあ、何も気にしてくださらなくて大丈夫ですよ。
 大した怪我じゃないですから」
 
「幾らでも俺の事パシっていいっすから。
 遠慮しないで、何でも任せてください」
 
「ありがとうございます」
 

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料理が運ばれてきた。
いただきます、と言って2人で食べ始めた。
 
「どうっすか、最近」
 
「どうって、まあ、仕事は適度に余裕持って
 出来てるので、丁度いいですね。
 あんまり暇でも困るし、忙しくても大変ですし」
 
「俺が聞きたいのは、仕事についてじゃなくって、
 もっとこう……プライベートな事っす。
 ぶっちゃけ、良い人とかいないんすか」
 
僕はこの手の質問に対して曖昧に濁すのが
余り好きではなかったので、率直に答えた。
 
「彼氏が出来ました」
 
飯をかきこんでいた犬飼さんの手が止まった。
 
「えっ……」
 
「すみません、隠すつもりは無かったんですが、
 中々お伝えするタイミングが無くって」
 
冗談の様に犬飼さんの顔が真っ青になっていく。
犬飼さんは茶碗と箸を置いて僕に訊いた。
 
「それって、ひょっとして、
 ##社の亘さんとか言う人っすか?」
 
「ええ、まあ、そうです」
 
犬飼さんの目がみるみる内に充血して行く。
 
「お、俺も、駒さんの事、好きだったのに!」
 
案の定泣き出してしまった。
これで犬飼さんを泣かせるのは2度目だ。
 
図体のでかい男がいきなりわんわんと泣き出したのを見て、
昼食時で賑やかだった周囲が一瞬にして静まり返った。
 
僕は困り果ててしまった。
白昼堂々人目も憚らず同性からいきなりの告白を受けた挙句、
泣かれてしまうとは。
泣きたいのはこっちの方だ。
 
「すみません、僕、犬飼さんの気持ちにも気付かないで」
 
「酷いっす。
 俺、俺、駒さんに認められる立派な男になろうと
 必死で色んな事頑張ってたのに」
 
常に仕事熱心だったり、上司や先輩社員から好かれようと必死だったり、
時間が空けば勉強に打ち込む犬飼さんを、
どことなく生き急いでる様に感じていたが、
まさか裏にこんな意図が働いていたとは。
健気な奴だなあとぼんやり思った。
 
しかし現実逃避している場合ではない。
この図体にしてさめざめと泣いている男を
僕は何とかしなければならない。
 
「ま、まあまあ。
 僕程度の男なんて掃いて捨てる程居ますから。
 それに、犬飼さんだったら、
 僕なんかよりもっと良い人がすぐ見つかりますって」
 
嗚咽を漏らしながら犬飼さんは答える。
 
「駒さんじゃなきゃダメなんっす。
 俺、駒さんが居なかったら、
 生きていけいけないっす」
 
なんという殺し文句だろうか。
犬飼さんにこんな風に言われたら、
どんなゲイだろうが女だろうが
落ちない者は居ないだろう。
……泣いてさえいなければ。
 

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しかし本当に困ってしまった。
今回ばかりは、恐らくどんな言葉を掛けても
犬飼さんは泣き止まないだろう。
困り果てたが、僕は率直に犬飼さんに伝えた。
 
「犬飼さん……。お気持ちは嬉しいです。
 でも、申し訳無いですけど、犬飼さんに今どんなに泣かれても、
 僕が別れて犬飼さんと一緒になる事は無いですよ。
 それは勿論犬飼さんのせいじゃないです。
 運が悪かったと思って諦めてもらう他無いです」
 
「俺、俺――」
 
犬飼さんが気の毒になり、僕は提案した。
 
「そこまで僕を想っててくださったのに、
 気持ちに気付いてあげられなかった僕も、
 悪い事したと思ってます。
 なんで、犬飼さんの気が済むように、
 何か付き合いますよ。
 彼氏には内緒ですが……デートとか」
 
デート、という言葉を僕が発した途端、
犬飼さんの涙が一瞬止まった。
しかし変な期待をされては困ると考え
すぐに付け足した。
 
「ただし、当然ですが性的な事は伴いません。
 キスもハグもNGです」
 
「……解ったっす。
 俺も男なんで、それできっぱり駒さんの事は諦めるっす。
 その代わり、丸々24時間付き合ってもらえますか。
 朝から、次の日の朝まで」
 
朝帰りになるのか。
亘は絶対に良い顔をしないだろう。
しかし、言い出した手前、引っ込みがつかなかった。
 
「いいですよ。
 その24時間で僕を諦めてもらって、
 新しく良い人を探してください。
 だからもう、泣かないで」
 
ようやく犬飼さんは泣き止んだ。
しかし、すっかり泣き腫らした目になってしまって、
オフィスに戻れば一目で泣いた後だと
誰もが気付いてしまうだろう。
 
「ほら、ご飯食べましょう。
 時間も無いですし」
 
「……うっす」
 
さて、亘にはどう説明しよう。
朝帰りになる以上、事のいきさつを説明して
断りを入れていかなければならないだろう。
そして絶対に亘は嫉妬する筈だ。
例え身体の関係が無かったとしても。
頭が痛くなった。

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