僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

あふれる涙をかなぐり捨ててまた走り出せよ

昨日はバイトを休んで精神科へ行って来た。
 
Blogにはあまり書いていなかったが、
僕は月に1回、精神科へ行っている。

 

以前はとある大学病院の中にある心療内科に通っていたのだが、
ヤブだなと思い至り、結局違う病院へ変えていた。
 
この病院に変えてから、調子が良い。
薬が合っているのか、寝付きも悪くないし、
幻聴とめまいも殆ど治まっている。
 
朝、家を出る時は苦労した。
いつもは亘と共に家を出て、
同じ電車でS×駅へ向かうのだが、
病院へ行くにはS×駅とは真逆の方面へ向かう電車に
乗らなければならなかった。
精神科へ通っている事は亘には秘密にしてあるから、
適当に言い訳をして誤魔化した。
 
精神科へ行き、整骨院へ行き、MJまで戻った頃には
既に夕方になっていた。
今夜は亘は帰りが早いらしい。
病院を梯子して疲れてしまった僕は、
今夜は外食にしないかと亘に提案し、
夕食は近所のイタリアンへ連れて行ってもらう事になった。
 
亘とはMJ駅で待ち合わせた。
珍しく早く帰って来た亘だったが、
これまた珍しく、機嫌が悪かった。
 
「亘さん、なんか怒ってます?
 やっぱり家で何か作った方が良かったですか?」
 
「いや、別に……。何でもないよ」
 
気まずい雰囲気の中、食事を済ませ、
亘の部屋へと向かった。
 

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亘のマンションのエレベーターに乗り込んだ時、
僕ははっと思い出した。
うっかり、今日病院で処方された薬を
寝室の机の上に出しっ放しにして来てしまった。
あれを見られてはならない。
 
部屋へ着いて、亘が洗面所へ行った隙に
急いで寝室の机へ向かう。
薬の袋を取って、鞄へしまおうと振り向くと、
洗面所へ行った筈の亘が寝室の入り口に立っていた。
咄嗟に薬の袋を掴んだ手を背後に隠した。
 
「何してんの?」
 
「い、いえ、別に」
 
「今何か隠しただろ」
 
「隠してません」
 
「じゃ、手見せてみろよ」
 
「嫌です」
 
「疚しい事があるから見せられないんだろ。
 朝からこそこそおかしいんだよ」
 
苛立った様子の亘が歩み寄ってきて、
僕は後ずさったが、すぐに机にぶつかった。
亘は僕の手を力尽くで引っ張り、
薬の袋を奪った。
亘は薬の袋の文字を読み上げた。
 
「内用薬……精神科?」
 
僕は亘の手から袋を引ったくり、
鞄の元まで足を引き摺りながら向かった。
僕は鞄を背負って玄関へ向かおうとしたが、
足を引き摺りながらでは早く進めず、
すぐに亘に捕まった。
 
「駒ちゃん!」
 
そう呼び止められて初めて、
僕は自分の目から
涙がこぼれている事に気が付いた。
 
亘に病気を知られたくなかった。
しかし知られてしまった。
もうここには居られない。
きっと亘だって、精神病の恋人なんて
疎ましく思うだろうに決まっている。
もう、亘のそばには居られない。
 
亘の手から逃れようともがく。
だが、もがけばもがく程、
亘の僕を抑える手に力が入っていって
その手を振り解けなくなった。
亘に両肩を捕まれ、
僕はとうとう声を上げて泣き出した。
悲しくてならなかった。
もう何もかも終わりだ。
いっそ今すぐにでも死んでしまいたいと願う。
がたがた震えながら僕は泣いた。
 

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「ごめん。ごめんね。駒ちゃん。
 誰だって、内緒にしておきたい事もあるよね」
 
「放してください。
 亘さんなんて嫌いです。
 優しいふりして、本当は僕の事なんか――」
 
俺が悪かったよ。本当にごめん」
 
「どうせそうやって、綺麗事言って体裁保って、
 人のことゴミみたいに捨てるつもりのくせに」
 
「そんな事無いから。落ち着いて。泣かないで」
 
「もう嫌です。こんな人生。
 誰も僕の事なんか……」
 
泣きじゃくる僕の唇を亘の唇が無理矢理塞いだ。
逃れようとしたが、顎をがっちり掴まれてしまい叶わなかった。
 
「『誰も僕の事なんか』、何?」
 
「誰も、僕の事なんか、愛さないですよ」
 
「……そっか。まあ、俺は例外だけどね」
 
亘はそう言うと、僕を抱き寄せて持ち上げた。
僕は抵抗して暴れたが、亘の強い力に勝てずにいる内に
リビングのソファに下ろされた。
僕は足の怪我も忘れ無我夢中に暴れていたようで、
立ち上がろうとしたが足に強い痛みが走ったので、
もう観念して大人しくする事にした。
 
大人しくなった僕に安堵の息をついて、
亘はキッチンへ向かい、
2つのグラスを手にソファへ戻って来た。
 
グラスの中身はカルアミルクだった。
僕は啜り泣きながらグラスに口をつけた。
どうせならもっと強い酒が欲しかった。
自分の吐瀉物に塗れながら酔い潰れて
何もかも忘れてしまいたい。
 
亘は訥々と話し出した。
 
「まあ、ぶっちゃけ、うっすら気付いてたよ。
 駒ちゃんの病気。
 だって、これだけ一緒に居る訳だしね。
 俺に見られないように、こっそり薬飲んでるのも知ってたし。
 それにやっぱ、健康体の人はリストカットなんかしないでしょ」
 
「……それもそうですね」
 
「辛かったよね。それなのに、ごめん」
 
「亘さんは、何も悪くないです。
 悪いのは病気の僕です」
 
「そんな事言うなって。
 もし――駒ちゃんが良かったらだけど、
 話、聞かせてくれないかな。
 言いたくない事は言わなくて良いからさ」
 
「話って?」
 
「うーん、今まで生きてきて起きた、色んな事。
 こんな人生嫌だって、さっき言ってたから、
 それがどういう意味なのか、俺は知っておきたい」
 

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亘の真剣な眼差しに促されるように、
僕はこれまでの人生について話した。
 
両親の離婚。継父との確執。死んでしまった愛犬。
東京に出てきてからの日々。借金。職場で受けたいじめ。
僕を苦しめる病魔との闘い。家族から言い渡された絶縁。
実に数時間掛かりで、ありとあらゆる出来事を話した。
 
亘は途中で口を挟んで遮ったりして意見を述べたりする事なく、
じっくりと僕の話を聞いてくれた。
 
「――これが、僕の生きてきた2●年間です」
 
「うん。話してくれてありがとう」
 
「どう思われましたか。僕の事」
 
「なんて言えばいいのかな。
 なんか、もっと駒ちゃんが大事な存在になったような、
 そんな感じがする。
 関係性のステージが1つ上がったっていうか」
 
亘は言葉を選んだ様子で、改めて切り出した。
 
「駒ちゃんがどんな人生を生きてこようと、
 どんな病気を持ってようと、
 俺の駒ちゃんを思う気持ちは変わらないよ。
 だから、駒ちゃんには、もっと俺を信じて欲しいかな。
 今日、ちょっとカッとなっちゃったのは、
 まだ俺を信用してくれてないんじゃないかって言う
 不安とか、悔しさみたいなのがあって……。
 とは言え、馬鹿だったよね、俺。謝るよ」
 
亘はグラスの中身を呷って続けた。
 
「駒ちゃんの話、聞けて本当に良かったよ。
 ……改めて、ずっと一緒に居たいって、思った。
 俺には駒ちゃんが必要だし、
 そんな駒ちゃんに必要とされる男になりたいと思う」
 
櫻井さんが先日言っていた事の意味がようやく解った気がする。
亘なら、信じてみても良いかも知れない。
いや、信じてみたいと思った。

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