僕が踏み躙ってきた愛情と日常の総て

ゲイ。アラサー。フリーター。こんな僕の日記です。

週末の悪夢

これは土曜日の夜から日曜の早朝に掛けての日記だ。
 
夕食後、少し酒が回った亘がこんな事を言い出した。
 
「駒ちゃん、カラオケ行こう!」

 

僕はその昔、歌手を目指していた事もあったのだが、
カラオケは何となく好きではなかった。
しかしここ最近、足の怪我で遠出もままならず
陰鬱に過ごしていたので、
たまには憂さ晴らしになるかと思い承諾した。
 
MJから×Bの繁華街へ出て、カラオケ店に入った。
飲み放題つきのフリータイムで部屋を取った。
 
カラオケに来るのなんてもう何年ぶりだろうか。
部屋に着いて酒を注文し、曲を選ぶ。
僕は中々決めかねていた。
亘はさっと曲を決め、先に歌うね、と僕に断りを入れ、
リモコンで曲を入力した。
そういえば、亘が歌を歌う所を見るのは初めてだなと
僕は暢気に思った。
 
亘が歌い出す。ミスチルの曲だった。
……ここからが地獄の始まりだった。
 
何というか、下手という言葉では形容し切れない歌唱だった。
ジャイアンのリサイタルってこんな感じなんだろうか。
脳からは危険信号が放たれ、全身に鳥肌が立つ。
意識が飛びそうになった。
いや、もしかしたら意識が無い方が楽かも知れない。
僕は精神崩壊の危機に瀕していた。
これはやばい。
 

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あまりの亘の絶唱っぷりに呆気にとられた。
曲が終わり、自分の曲を入れる事も忘れて
ただ呆然としていると、
実に不思議そうな顔で亘が訊いて来た。
 
「駒ちゃん、どうしたの?
 曲入れないの?」
 
「えっ……いや、あの、
 素晴らしいお歌だなと思って……」
 
僕はほんのり皮肉を込めたつもりだったが、
亘は額面通りに受け取った。
 
「そうかな!? なんか恥ずかしいや。
 けど駒ちゃんからそう褒めて貰えると嬉しいな~。
 どんどん飲んでいっぱい歌おうね」
 
今夜一晩中この歌を聞かせ続けられるのか。
おぞましい。
 
自分が曲を入れて歌わない限り、
亘は歌い続ける訳なのだから、
被害を少なくするには
交互に歌わなければならない。
 
僕は必死で次から次へと歌っていった。
歌い、耐え、また歌い、また耐え、という繰り返しだ。
 
そのサイクルも、数時間と経つに連れて
しんどくなっていった。
亘は身体を鍛えているだけあって、
どうという事ない様子だ。
 
どうにかして中断させようと試みた。
 
「ちょ、ちょっと休憩して、
 何か食べませんか」
 
「え~、今そんなにお腹空いてないよ。
 それに時間勿体無いじゃん」
 
「まあ、そう仰らず……。
 ほら、甘いのとか、おいしそうですよ。
 酒も頼みましょう」
 
「うーん、食べ物はいいや。
 お酒だけ頼もっか」
 
何か食べる事で中断させ、休憩をしたかったのだが
叶わなかった。
 
亘は曲を入力した。悪夢がまた始まる。
今度はスピッツの『空も飛べるはず』だった。
これがまたきつかった。
しかも亘は歌うときのノリが若干古い。
僕の肩を組んで、『空も飛べるはず』の歌詞に合わせて肩を揺らした。
場末のスナック風だ。正直言ってかなり寒い。
勘弁して欲しかった。
 
こんな調子で夜が更けていった。
 
僕はまた1つ亘について詳しくなった。
歌が得意ではないという事と、
……それに本人が全く気付いていないと言う事だ。

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